判旨
委任の趣旨に反して受任者が第三者の名義で不動産を買い受けた場合、当該不動産の所有権は売主から名義人となった第三者へ直接移転する。
問題の所在(論点)
不動産買受けの委託を受けた者が、委託の趣旨に反して第三者名義で契約を締結した場合、不動産の所有権は誰に帰属するか。特に、本人が直接所有権を取得し、相手方に対して所有権を主張できるかが問題となる。
規範
不動産売買において、代理人ないし受任者が本人の委託の趣旨に反して第三者の名義で契約を締結した場合、売買契約の当事者は売主と当該名義人であり、所有権は特段の事情がない限り売主から名義人へと直接移転する。この場合、本人と受任者等の間に別途法律関係が生じることはあっても、本人が当然に所有権を取得することはない。
重要事実
上告人は訴外Fに対し、本件宅地および畑地の買受けを委託した。しかし、Fは上告人の委託の趣旨に反し、訴外Eの名義で売主Dから本件不動産を買い受け、Eへの所有権移転登記を完了させた。その後、当該不動産は被上告人の名義となった。上告人は、自身が真実の所有者であると主張し、被上告人に対して所有権確認および登記抹消を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、売主Dと買主Eとの間で売買契約が成立し、登記もEになされている。Fが上告人の委託に反してE名義で買い受けたという事情があっても、契約の形式的・実質的当事者はEと解される。したがって、所有権はDからEへ直接移転しており、上告人が所有権を取得した事実は認められない。上告人とF・E間に債務不履行等の法律問題が生じる余地はあるが、それは不動産所有権の帰属そのものを左右するものではない。
結論
上告人は本件不動産の所有権を取得していないため、被上告人(現在の登記名義人)に対する所有権確認および登記抹消請求は認められない。
事件番号: 昭和28(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和30年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の売主が目的物の所有権が買主に属することを争う場合、買主は当該売主に対し、所有権確認の訴えを提起する確認の利益を有する。 第1 事案の概要:上告人A1は、自らおよび上告人A2の法定代理人として、本件各不動産を被上告人(買主)に売り渡した。しかし、その後上告人A1は、本件不動産の所有権が被上…
実務上の射程
他名義を利用した不動産取得における物権変動の帰属を画定する際、契約当事者の確定が優先されることを示す。代理権の逸脱や委任契約の違反があっても、物権変動は契約当事者間で生じるため、本人が権利主張を行うには、名義人からの移転登記手続などを別途検討する必要がある。
事件番号: 昭和24(オ)195 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が長男を代理人として売買契約を締結させた事案において、代理権の存在を前提とした原審の事実認定を適法とした。 第1 事案の概要:上告人(本人)と被上告人の間で不動産の売買がなされた際、上告人の長男であるDが代理人として関与した。上告人は、本件登記は関知しない無効なものであり、Dが不身持で自宅に寄…
事件番号: 昭和26(オ)107 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 破棄差戻
一 甲から不動産を買受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないに拘らず、甲から丙名義に所有権移転登記を受けることを承認したときは、民法第九四条第二項を類推し、乙は丙が所有権を取得しなかつたことを以て善意の第三者に対抗し得ないものと解すべきである。 二 乙が買受けた不動産につき単に名義上所有権取得の登記を受けたにすぎ…
事件番号: 昭和34(オ)1279 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の所有権が転々譲渡された場合、前主(中間者)は後主に対して登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者には該当しないため、後主の登記が中間省略登記であってもその無効を主張できない。 第1 事案の概要:本件建物の所有権は、上告人からD実業株式会社へ、同社から再び上告人へ、上告人から訴外Eへ、そ…
事件番号: 昭和24(オ)326 / 裁判年月日: 昭和25年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他主占有から自主占有への転換が認められるためには、権原の性質上所有の意思がないものと認定される占有において、客観的にみて所有の意思があるものと解される事情が必要である。 第1 事案の概要:被上告人の先代Dは、本件不動産を「家産」として所有し、その散逸を防止するために上告人A1夫婦に管理させていた。…