判旨
本人が長男を代理人として売買契約を締結させた事案において、代理権の存在を前提とした原審の事実認定を適法とした。
問題の所在(論点)
民法99条の代理の成立に関し、本人が代理人(長男)を通じて売買契約を締結したといえるか、また、その事実認定の過程に違法があるか。
規範
代理人が本人を代理して売買契約を締結した場合、その法律効果は本人に帰属する。代理権の授与および代理行為の有無は、諸般の証拠に基づき事実認定されるべき事項である。
重要事実
上告人(本人)と被上告人の間で不動産の売買がなされた際、上告人の長男であるDが代理人として関与した。上告人は、本件登記は関知しない無効なものであり、Dが不身持で自宅に寄り付かない状況であったこと、また売買は借用金返済目的であったこと等を主張して、代理権の存在や有効性を争った。
あてはめ
原審の証拠によれば、上告人が長男Dを代理人として本件売買をなさしめたと認定することが可能である。上告人が主張する「借金返済目的の売買」や「Dが妾宅に寝泊まりし自宅に寄り付かなかった」等の事実は、原審では認定されておらず、単なる独自の主張にすぎない。したがって、証拠の取捨選択や事実認定において条理に反する違法は認められない。
結論
上告人が長男Dを代理人として売買を行わせたとの原審の事実認定は適法であり、本件売買の効果は上告人に帰属する。
実務上の射程
具体的な判断枠組みの提示はないが、親族間における代理権の授与を事実認定の問題として処理する際の事例として参照される。司法試験においては、本人が代理権の存在を争う事案において、本人の関与の程度や代理人の地位等の間接事実を総合考慮して有効な代理権の授与を肯定する際の論理構成の参考となる。
事件番号: 昭和46(オ)295 / 裁判年月日: 昭和48年4月3日 / 結論: 棄却
公正証書が甲を代理する権限のない乙の作成嘱託によつて作成されたものであるときは、該公正証書の効力は甲に及ばないというべきであり、その公正証書にもとづき甲所有の不動産についてされた強制競売手続は同人に対する関係では債務名義なくしてされたものというべきであつて、該不動産の競落人はその所有権を取得しない。
事件番号: 昭和24(オ)326 / 裁判年月日: 昭和25年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他主占有から自主占有への転換が認められるためには、権原の性質上所有の意思がないものと認定される占有において、客観的にみて所有の意思があるものと解される事情が必要である。 第1 事案の概要:被上告人の先代Dは、本件不動産を「家産」として所有し、その散逸を防止するために上告人A1夫婦に管理させていた。…
事件番号: 昭和25(オ)105 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、代理人が本人に代わって契約を締結する旨を表示した事実は、本人のためにすることを示したものとして顕名(民法99条1項)が認められる。また、契約成立の単なる経過的事由は請求を理由あらしめる主要事実ではないため、当事者の主張と多少異なる事実を認定しても弁論主義には反しない。 第1 事案…
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…
事件番号: 昭和24(オ)65 / 裁判年月日: 昭和24年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟物たる権利関係に直接関係のない間接事実は、判決書において必ずしも摘示することを要しない。また、証人の証言が当事者の親族によるものであることのみをもって、その信用性を否定すべき実験則は存在しない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)に対し、貸金債権の存在を主張してその支払いを求め…