判旨
訴訟物たる権利関係に直接関係のない間接事実は、判決書において必ずしも摘示することを要しない。また、証人の証言が当事者の親族によるものであることのみをもって、その信用性を否定すべき実験則は存在しない。
問題の所在(論点)
民事訴訟において、主要事実以外の間接事実は判決書に摘示する必要があるか。また、親族の証言であることを理由にその証拠力を否定すべき実験則は存在するか。
規範
判決書には、判決の結論を導くために必要な事実(主要事実)を摘示すれば足り、主要事実の存否を推認させるに過ぎない間接事実については、判決書に摘示することを要しない。また、証拠の採否及びその評価(証拠力)の判断は、特段の事情がない限り裁判所の自由心証に委ねられる。
重要事実
被上告人(原告)が上告人(被告)に対し、貸金債権の存在を主張してその支払いを求めた事案。上告人は、弁済を怠った場合に土地建物の所有権を移転する旨の約束に基づき権利証等を交付した事案の存否が争点であると主張したが、原審は証人Dの証言等に基づき貸金債権の成立を認めた。これに対し上告人は、当該事実の不摘示、証拠評価の不当(証人が親族である点や書証との矛盾)を理由に上告した。
あてはめ
本件において、上告人が主張する権利証の交付等の事実は、貸金債権の存否という主要事実を推認させるための附随的事実、すなわち間接事実にすぎない。したがって、判決書への摘示は不要である。また、証人Dが被上告人の兄であるという事由のみで証言が偽りであると断定することはできず、書証との間に実験則に反するほどの矛盾も認められない。よって、これらの証拠を採用して事実認定を行った原審の自由心証に違法はない。
結論
間接事実は判決書への摘示を要さず、また親族の証言であっても裁判所が自由な心証によりこれを採用することは適法である。
事件番号: 昭和24(オ)45 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の所有権の帰属が争われる事案において、建物の修繕、火災保険料の支払い、敷地借地権の譲受けおよび敷地料の支払い等の事実は、所有権を認定するための有力な資料となる。また、判決正本の裁判官名の誤記が原本や調書から明らかな誤記と判断できる場合は、口頭弁論に関与しない裁判官が判決をした違法があるとはい…
実務上の射程
主要事実と間接事実の区別に関する基本判例であり、答案作成上は「弁論主義の適用範囲」や「判決の理由不備」が問題となる場面で、間接事実の摘示不要性を支える論拠として使用できる。また、自由心証主義における証拠評価の合理性に関する一般論としても有用である。
事件番号: 昭和24(オ)195 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が長男を代理人として売買契約を締結させた事案において、代理権の存在を前提とした原審の事実認定を適法とした。 第1 事案の概要:上告人(本人)と被上告人の間で不動産の売買がなされた際、上告人の長男であるDが代理人として関与した。上告人は、本件登記は関知しない無効なものであり、Dが不身持で自宅に寄…
事件番号: 昭和24(オ)120 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
当事者が贈与による所有権の取得を主張する場合、裁判所が右主張に基いて贈与の事実を認定している以上、贈与者がその物の所有権を取得するに至つた経過について、当事者の主張と異なる認定をしていても、当事者の申し立てない事項について裁判したものとはいえない。
事件番号: 昭和31(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立するのは主要事実に限られ、間接事実に関する自白には拘束力が生じない。また、自由心証主義の下では、間接事実が存在したとしても、裁判所が直ちに主要事実を認定すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、Dから上告人への贈与契約が成立したと主張したが、原審はその主張を排斥…
事件番号: 昭和29(オ)894 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
いわゆる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しない。