いわゆる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しない。
いわゆる間接事実についての自白の拘束力
民訴法257条
判旨
裁判上の自白の拘束力は、主要事実に限定される。主要事実を推認させるための資料に過ぎない間接事実については、たとえ当事者間に合致した主張があっても、裁判所はその拘束を受けず、自由な心証によって事実を認定することができる。
問題の所在(論点)
当事者間に争いのない「間接事実」について、裁判所は裁判上の自白としての拘束を受け、自白と異なる事実認定をすることが禁止されるか。弁論主義の適用範囲が問題となる。
規範
弁論主義における「自白」とは、自己に不利益な事実を認める陳述を指すが、裁判所を拘束する効果(不要証効・審判権の制限)が生じるのは主要事実に限られる。間接事実(主要事実の存否を推認するための事実)については、証拠能力や証拠力と同様、自由心証主義の範疇に属するため、自白の拘束力は及ばない。
重要事実
本件土地の所有権取得をめぐる紛争において、被上告人が「上告人の父から11万円を受け取った事実」について、第一審の口頭弁論で被上告人側がこれを認める旨の陳述をした。上告人は、この陳述は自白にあたり、裁判所はこれに拘束されるべきであると主張した。しかし、本件の主要な争点は「本件土地の買主が被上告人か上告人か」であり、金員授受の事実はその成否を推認させるための間接事実に過ぎなかった。その後、被上告人は当該自白の内容を訂正した。
事件番号: 昭和31(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立するのは主要事実に限られ、間接事実に関する自白には拘束力が生じない。また、自由心証主義の下では、間接事実が存在したとしても、裁判所が直ちに主要事実を認定すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、Dから上告人への贈与契約が成立したと主張したが、原審はその主張を排斥…
あてはめ
本件において、「金11万円を受領した事実」は、本件土地の買主が誰であるかという「主要事実」を認定するための資料、すなわち「間接事実」に過ぎない。このような間接事実は、証拠と同様に事実認定の素材となるものであり、裁判所は当事者の主張に左右されず自由な心証で判断できる。したがって、たとえ一度自白がなされ、後にそれが訂正されたとしても、裁判所は訂正後の内容を真実に合致するものとして採用し、主要事実の有無を判断しても違法ではない。
結論
間接事実に自白の拘束力は及ばない。したがって、金員授受の事実について自白があっても、裁判所はこれに拘束されず、独自の事実認定を行うことができる。
実務上の射程
自白の対象を主要事実に限定する「主要事実説」を確立した重要判例である。司法試験の答案作成においては、弁論主義の第一テーゼ(主張責任)や第二テーゼ(自白の拘束力)の適用範囲を論じる際、補助事実や間接事実を排除するための根拠として引用する。事実認定の自由(自由心証主義)との境界を画する基準として機能する。
事件番号: 昭和33(オ)257 / 裁判年月日: 昭和35年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の拘束力は主要事実にのみ及び、主要事実の存否を推認させるにすぎない間接事実については、当事者間に争いがなくても裁判所はこれに拘束されない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が1か月分の利息相当額を損害金として受領した旨の自白があるにもかかわらず、原審がこれに反する事実を確定したこと…
事件番号: 昭和28(オ)533 / 裁判年月日: 昭和31年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が明示的に事実を主張していない場合であっても、証拠の申出や弁論の全趣旨から、その事実を主張する意思が認められるのであれば、裁判所は当該事実を認定して判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し請求を行った事案において、被上告人は解除権の留保およびこれに基づく契約解…
事件番号: 昭和30(オ)573 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証言の一部に事実に符合しない部分があっても、それだけで直ちに他の部分が信用できなくなるものではなく、証拠の採否は事実審の専権に属する。 第1 事案の概要:上告人は、原審における事実認定に関し、経験則に反する認定があること、および採証の法則に違反して事実認定が行われたことを主張した。具体的には、証言…