判旨
裁判上の自白が成立し、裁判所を拘束するのは主要事実に限られ、建築所有の帰属を間接的に推認させるに過ぎない間接事実については、自白の拘束力は及ばない。
問題の所在(論点)
家屋の建築所有という主要事実の存否を推認させるための「敷地の転借」という事実は、裁判上の自白が成立し裁判所を拘束する「事実」にあたるか。
規範
裁判上の自白(民事訴訟法179条参照)とは、相手方の主張する自己に不利益な事実を認める陳述を指し、これが成立した場合には裁判所はその事実に拘束される。しかし、この拘束力が及ぶのは主要事実に限定され、主要事実の存否を推認させるに過ぎない「間接事実」についての自白は、裁判所を拘束しない。
重要事実
上告人らは、本件家屋が亡先代Dの建築・所有であると主張した。これに対し、被上告人は家屋の建築所有を主張。争点の一つとして、Dが敷地を第三者から「転借」したか否かが浮上した。被上告人は一旦この転借の事実を認めた(自白した)が、後にこれを取り消した。上告人は、この転借事実の自白には拘束力があり、裁判所はそれに反する事実認定ができないと主張して上告した。
あてはめ
本件の主要な争点は、本件家屋を「誰が建築所有したか」である。Dが敷地を転借したか否かは、建築所有という主要事実を間接的に推認せしめる「間接事実」に過ぎない。自白の拘束力に関する判例法理に照らせば、間接事実についての自白は裁判所を拘束しない。したがって、被上告人が転借の事実を認め、後にこれを取り消した場合であっても、裁判所はその自白に拘束されることなく、他の証拠に基づき所有権の帰属を判断することができる。
結論
間接事実に関する自白に拘束力はない。したがって、敷地転借事実の自白にかかわらず、裁判所が独自の証拠評価に基づき家屋の所有権帰属を認定した原審の判断に法令違背はない。
事件番号: 昭和31(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立するのは主要事実に限られ、間接事実に関する自白には拘束力が生じない。また、自由心証主義の下では、間接事実が存在したとしても、裁判所が直ちに主要事実を認定すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、Dから上告人への贈与契約が成立したと主張したが、原審はその主張を排斥…
実務上の射程
裁判上の自白の対象が主要事実に限られることを示す基本判例である。答案上では、自白の成否が問題となる場面で、当該事実が「主要事実(権利の発生・変更・消滅を規定する法規の構成要件に直接該当する事実)」か、あるいは「間接事実(主要事実を推認させる事実)」かを峻別する際に引用する。
事件番号: 昭和33(オ)257 / 裁判年月日: 昭和35年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の拘束力は主要事実にのみ及び、主要事実の存否を推認させるにすぎない間接事実については、当事者間に争いがなくても裁判所はこれに拘束されない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が1か月分の利息相当額を損害金として受領した旨の自白があるにもかかわらず、原審がこれに反する事実を確定したこと…
事件番号: 昭和31(オ)165 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論主義が適用されるのは主要事実に限られ、間接事実については裁判所が当事者の主張に拘束されず、証拠に基づいて当事者の主張と異なる事実を認定しても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が当事者の主張と異なる事実を認定した点に違法があると主張して上告した。具体的には、原判決が認定した事実の一…
事件番号: 昭和29(オ)894 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
いわゆる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しない。