主要事実が弁論に現われている場合には、証拠調の結果から認められる間接事実は当事者からの主張がなくとも判決の基礎に採用できる。
間接事実と弁論主義
民訴法186条
判旨
主要事実については弁論主義が適用されるが、主要事実を推認させるための間接事実については、当事者による主張がない場合であっても、証拠調べの結果に基づき裁判所が認定できる。
問題の所在(論点)
所有権確認訴訟において、被告が主張した売買の具体的態様(代理人の氏名等)が主要事実に該当するか、あるいは主要事実を否認するための間接事実にすぎないか。また、間接事実について当事者の主張を待たずに裁判所が認定できるか。
規範
弁論主義の第一テーゼ(主張責任)は主要事実にのみ適用される。主要事実の存否を推認させるにすぎない間接事実については、当事者が主張していない事実であっても、証拠調べの結果から認められる限り、裁判所はこれを認定の資料に用いることができる。
重要事実
上告人(原告)は、本件土地が自己の所有であると主張し、被上告人(被告)らに対して所有権確認および所有権移転登記抹消等を求めた。これに対し被上告人らは、それぞれ上告人から土地を買い受けたと主張(積極否認)した。原審は、証拠に基づき、上告人の代理人Eまたは無権代理行為を追認されたFから被上告人らに対し、土地が売り渡された事実を認定した。上告人は、当事者が主張していない「代理人E等による売買」を認定したことは弁論主義違反であるとして上告した。
あてはめ
本件訴訟の目的は上告人の所有権の有無であり、上告人が主張する「土地が自己の所有である」という点が主要事実となる。これに対し、被上告人らが主張する「売買の事実」は、上告人の所有権を否定するための積極否認に含まれる事実であり、所有権という主要事実の存否を左右する間接事実にすぎない。したがって、売買における代理人が誰であったかという細部は間接事実の範囲内であり、当事者が具体的な氏名を主張していなくとも、裁判所が証拠によってこれを認定することは弁論主義に反しない。
結論
間接事実は弁論主義の適用を受けないため、当事者の主張に関わらず証拠から認定可能である。したがって、代理人の認定に際して弁論主義違反や審理不尽の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
主要事実と間接事実の区別に関する基本判例。積極否認において、自己の権利を基礎付ける事実(抗弁)ではなく、相手方の主要事実を推認により否定する事実は間接事実として扱われることを示している。答案上は、主張にない事実を裁判所が認定した場合の弁論主義違反の有無を検討する際に、当該事実が「主要事実」か「間接事実」かを分類する論拠として用いる。
事件番号: 昭和26(オ)256 / 裁判年月日: 昭和28年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、主要事実につき当事者の主張がある場合には、これを推認させる間接事実に限り、当事者の陳述がなくても「顕著な事実」として判決の基礎とすることができる。また、職務上顕著な事実とは、公知の事実に限らず、当該裁判所が職務上知得した事実をも含む。 第1 事案の概要:上告人と訴外Dとの間で行われた立木…
事件番号: 昭和31(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立するのは主要事実に限られ、間接事実に関する自白には拘束力が生じない。また、自由心証主義の下では、間接事実が存在したとしても、裁判所が直ちに主要事実を認定すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、Dから上告人への贈与契約が成立したと主張したが、原審はその主張を排斥…
事件番号: 昭和31(オ)165 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論主義が適用されるのは主要事実に限られ、間接事実については裁判所が当事者の主張に拘束されず、証拠に基づいて当事者の主張と異なる事実を認定しても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が当事者の主張と異なる事実を認定した点に違法があると主張して上告した。具体的には、原判決が認定した事実の一…
事件番号: 昭和30(オ)369 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論主義の適用範囲は、権利の発生、変更、消滅という法律効果の判断に直接必要な「主要事実」に限定され、その前提となる間接事実や補助事実には及ばない。 第1 事案の概要:山林の所有権確認訴訟において、被上告人が所有権を承継取得した経緯(前々所有者の所有権取得に関する事実)について、原審が被上告人の主張…