判旨
裁判所は、主要事実につき当事者の主張がある場合には、これを推認させる間接事実に限り、当事者の陳述がなくても「顕著な事実」として判決の基礎とすることができる。また、職務上顕著な事実とは、公知の事実に限らず、当該裁判所が職務上知得した事実をも含む。
問題の所在(論点)
当事者の主張がない間接事実を、裁判所が「顕著な事実」として認定し、主要事実の認定に用いることは弁論主義に反しないか。また、裁判所が職務上知得した事実は「顕著な事実」に含まれるか。
規範
1. 弁論主義の適用範囲:権利の発生消滅という法律効果の判断に直接必要な事実(主要事実)は、当事者の主張がない限り判決の基礎とできない。これに対し、主要事実の存否を推測させる間接事実は、当事者の陳述がなくても、裁判所に顕著であれば判決の基礎とすることを妨げない。 2. 顕著な事実(民訴法179条):公知の事実のみならず、当該裁判所にとって職務上顕著な事実(職務上知得した事実)をも含む。これは必ずしも一般に了知されている必要はない。
重要事実
上告人と訴外Dとの間で行われた立木譲渡契約につき、Dに代理権があったかが争われた。原審は、Dに代理権がないと判断するにあたり、当事者が主張していない「被上告人先代の没後、Dと被上告人らとの間で遺産管理をめぐる深刻な争いがあり、現に同裁判所に十数件の訴訟が係属中である」という事実を職務上顕著な事実として認定し、主要事実(代理権の存否)を推認する資料とした。上告人は、これが弁論主義に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件で争点となっている「代理権の授与」は主要事実であるが、原審が認定した「親族間の深刻な紛争や訴訟係属の事実」は、その代理権の存否を推認するための間接事実にすぎない。したがって、主要事実について当事者間に争いがある以上、裁判所が職務上知得した間接事実を「顕著な事実」として証拠調べなしに採用しても、弁論主義の原則である主張責任に抵触しない。また、当該裁判所に現に多数の訴訟が係属している事実は、裁判所が職務上知り得るものであり、「顕著な事実」として取り扱うことが認められる。
結論
間接事実は当事者の主張がなくても顕著な事実として認定できる。裁判所が職務上知得した事実も顕著な事実に含まれるため、原審の判断に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
弁論主義の第一命題(主張責任)が主要事実にのみ適用され、間接事実には適用されないことを明示した重要判例である。答案上は、裁判所が当事者の主張しない事実を拾い上げて認定した場合の適法性を論じる際、事実の性質(主要事実か間接事実か)を区別する根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(オ)25 / 裁判年月日: 昭和25年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定および証拠の取捨選択は原審(事実審)の専権事項であり、経験則違背等の特段の事情がない限り、上告審がこれを覆すことはできない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した各事実について、経験則違背や審理不尽等の違法があると主張して上告を申し立てた。しかし、具体的な事案の内容や争点となった具…
事件番号: 昭和26(オ)913 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告において、原審の証拠取捨選択や事実認定を非難する主張は、特例法上の重要な法令解釈の主張には該当せず、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原審における証拠の取捨選択および事実認定について不服を申し立て、上告した。具体的には、証人D、E、Fの証言として、当日現金を持参した旨の…
事件番号: 昭和35(オ)1081 / 裁判年月日: 昭和38年3月26日 / 結論: 棄却
民訴法第一八六条所定の申立には、個々の攻撃または防禦方法である主張または抗弁は含まれない。