判旨
本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。
問題の所在(論点)
本件売買契約において、Dが上告人を代理して契約を締結する権限を有していたか、およびその効果が上告人に帰属するか。
規範
本人が他人に対し、特定の法律行為を行うことを委任し、そのための代理権を授与した場合には、民法99条1項に基づき、代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
重要事実
本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契約を締結した。この際、Dは上告人を代理して当該契約を締結する権限を、あらかじめ上告人から与えられていた。
あてはめ
原審が認定した事実によれば、Dは上告人を代理して本件建物を宮城県に売り渡すことを約しており、かつ、上告人からそのための代理権を有効に与えられていたと認められる。したがって、Dが行った売買契約の意思表示は、有効な代理権の行使として上告人本人に対してその効力を生じているといえる。
結論
Dには有効な代理権が認められるため、本件建物の売買契約の効果は上告人に帰属する。
実務上の射程
本判決は、具体的な代理権授与の事実認定を重視しており、実務上は委任状の有無や授与された権限の範囲等の事実を積み重ねて有権代理を肯定する際の基礎的な判断枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和35(オ)73 / 裁判年月日: 昭和37年9月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買の周旋を依頼された者が、実際の買主の存在を告げずに自己の名義で売買代金を支払い、自己宛の領収書を受け取った場合であっても、所有権を依頼者に帰属させる趣旨で周旋を行ったに過ぎないときは、特段の事情がない限り、目的物の所有権は当然に依頼者に帰属する。 第1 事案の概要:本件土地所有者Dから売却周旋…
事件番号: 昭和32(オ)240 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権代理人が本人の代理人として法律効果を本人に帰属させる趣旨で契約を締結した場合、その際に作成された文書が偽造されたものであるか否かにかかわらず、無権代理が成立する。 第1 事案の概要:Dは、Eから代理権を授与されていないにもかかわらず、Eの代理人として、法律効果をEに帰属させる趣旨で、被上告会社…
事件番号: 昭和27(オ)592 / 裁判年月日: 昭和29年8月31日 / 結論: 棄却
本人が代理人に対し、甲名義をもつて金員を借り受けることを委任し、これに基き代理人が甲のためにすることを示して第三者から金員を借り受けたときは、右消費貸借は本人に対して効力を生ずる。
事件番号: 昭和36(オ)50 / 裁判年月日: 昭和38年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人が本人から授与された権限(本件では10万円の保証および抵当権設定等)を超えて、より広範な内容の契約(30万円の根抵当権設定)を締結した場合、相手方が代理権を有すると信ずべき正当な理由があるときは、民法110条の表見代理が成立する。 第1 事案の概要:上告人はDに対し、10万円の範囲での借用債…