一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員が、県農地委員会の委員して、右計画に対する訴願裁決に関与することは違法ではない。 二 行政事件訴訟特例法第一一条によつて農地買収計画に関する訴願裁決の取消を求める請求を棄却するについて、単に一般的に農地買収は公共の福祉のためになされる旨を判示し、具体的に当該事件について裁決を取消しまたは変更することが公共の福祉に適合しない理由について首肯するに足りる理由を示さないのは違法である。 三 自作農創設特別措置法施行令(昭和二三年二月政令第三六号による改正前)第四三条によつて定めた農地買収計画を、右計画に関する訴願裁決で同令第四五条により買収を相当とし維持することは違法ではない。
一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員会の委員が、県農地委員会の委員として右計画に関する訴願裁決に関与することの適否 二 行政事件訴訟特例法第一一条によつて請求を棄却するについて理由を示さない違法がある一事例 三 自作農創設特別措置法施行令(昭和二三年二月政令第三六号による改正前)第四三条によつて定められた農地買収計画を訴願裁決で同令第四五条によるものとして維持することの可否
自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法(昭和22年12月法律241号による改正前)附則2項,昭和22年政令137号(農地調整法施行令改正)43条ノ2附則2項,昭和22年政令137号(農地調整法施行令改正)43条ノ2附則3項,行政事件訴訟特例法11条,自作農創設特別措置法施行令(昭和23年2月政令36号による改正前)43条,自作農創設特別措置法施行令(昭和23年2月政令36号による改正前)45条
判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地の買収・売渡は、憲法29条3項の「私有財産を公共のために用ひる」ことに該当し、同法が定める買収対価は同項の「正当な補償」に当たる。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づく農地買収が憲法29条3項の「公共のために用ひる」場合に当たるか、また、同法が定める対価が「正当な補償」といえるか。
規範
1. 自作農の創設による農業生産力の発展等は公共の利益に資するものであり、同法に基づく買収・売渡は憲法29条3項の公共的利用に該当する。 2. 憲法29条3項の「正当な補償」とは、その当時の経済状態において合理的に算出された相当な額を指し、必ずしも常に完全な市場価格を意味するものではない。
重要事実
上告人の所有する本件農地に対し、農地委員会は改正前の自作農創設特別措置法附則2項等に基づき、昭和20年11月23日現在の事実に依拠して買収計画を策定した。これに対し上告人は、手続上の違法があることに加え、同法に基づく買収および対価の定めが憲法29条3項に違反するとして、裁決の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 自作農創設特別措置法1条は、耕作者の地位安定や農業生産力の発展を目的としており、この目的達成のための買収は「公共のために用ひる」ことに該当すると評価できる。 2. 買収対価については、先行する大法廷判決の趣旨に照らし、同法6条3項等の規定による算出額は「正当な補償」としての要件を満たすものと解される。 3. 手続面においても、適用条文の解釈上、農地委員会が買収を相当と認める理由に実質的な差異はないため、裁決に違法はない。
結論
自作農創設特別措置法による農地買収は憲法29条3項に適合し、本件買収処分および裁決は適法である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
農地改革という特殊な歴史的背景下での判決ではあるが、憲法29条3項の「公共のため」の広範な解釈や、「正当な補償」が必ずしも完全補償(市場価格)を意味しない場合があることを示す重要判例として、損失補償の論点で使用する。
事件番号: 昭和25(オ)35 / 裁判年月日: 昭和29年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法29条3項の「正当な補償」とは、必ずしも常にその当時の完全な価格と一致すべきものではなく、合理的算出方法により決定された相当な額であればよい。自作農創設特別措置法による農地買収価格は、農地改革という社会変革の公共の利益に照らし、正当な補償の範囲内に属する。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創…
事件番号: 昭和36(オ)736 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条五号の事由ありと主張した事案において、同条四号の事由に該当するとの主張があるとしての判断をしなかつたとしても違法はない。
事件番号: 昭和27(オ)773 / 裁判年月日: 昭和29年2月19日 / 結論: 棄却
村農地委員会が自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に該当する農地として定めた買収計画について、その農地が同条第五項第二号に該当する故をもつて、農地所有者の申し立てた異議を斥けることは違法ではない。
事件番号: 昭和34(オ)655 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
人権に関する世界宣言に違反するという上告理由は法令違背を理由とするものではない。