村農地委員会が自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に該当する農地として定めた買収計画について、その農地が同条第五項第二号に該当する故をもつて、農地所有者の申し立てた異議を斥けることは違法ではない。
村農地委員会が自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて定めた買収計画についてその農地が同条第五項第二号に該当する故をもつて農地所有者の異議を斥けることの適否
自作農創設特別措置法3条1項,自作農創設特別措置法3条5項,自作農創設特別措置法7条1項,自作農創設特別措置法7条3項
判旨
農地買収計画が当初の理由において違法であっても、異議申立手続において正当な買収事由が示され、かつ処分手続を行う権限を有する機関によって実質的な更正・是認がなされた場合には、当該計画は適法なものとして維持される。
問題の所在(論点)
当初、不在地主の小作地としてなされた買収計画が、異議申立手続において仮装自作地であると判断された場合に、理由の差し替えを伴う更正・是認によって適法となり得るか。
規範
行政庁が本来有する処分権限の範囲内において、当初の処分理由に瑕疵があったとしても、異議申立に対する決定等を通じて正当な理由への更正・是認がなされたと認められる場合には、当該処分を適法なものと解すべきである。
重要事実
農地委員会は、上告人所有の農地を「不在地主の所有する小作地」として自創法に基づく買収計画を立てた。上告人からの異議に対し、同委員会は、当該農地が実際には「仮装自作地」に該当するとして異議を却下した。原審は、当初の買収理由が誤りであるため計画は違法としつつ、事情判決(旧行政事件特例法11条)により請求を棄却したが、上告人は計画そのものの違法性を主張して上告した。
事件番号: 昭和25(オ)236 / 裁判年月日: 昭和29年7月19日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員が、県農地委員会の委員して、右計画に対する訴願裁決に関与することは違法ではない。 二 行政事件訴訟特例法第一一条によつて農地買収計画に関する訴願裁決の取消を求める請求を棄却するについて、単に一般的に農地買収は公共の福祉のためになされる旨を判示し、具体的に当該事件につい…
あてはめ
本件買収計画の樹立当時、農地は不在地主の小作地ではなく仮装自作地であったため、当初の買収事由には違法がある。しかし、異議決定庁である農地委員会は自ら買収計画を定める権限を有しており、異議却下の際に「仮装自作地であるから異議の理由がない」と表示したことは、実質的に買収計画を更正是認したものと解される。したがって、計画は最終的に適法な根拠に基づいたものといえ、違法性は治癒または解消されたと評価できる。
結論
本件買収計画は結局において適法であり、原判決の結論(請求棄却)は正当である。
実務上の射程
行政処分の理由の差し替えや瑕疵の治癒に関する法理を示す。特に処分権限を有する機関が異議申立等の不服申立手続の中で実質的に内容を修正した際に、処分の同一性を維持しつつ適法化し得る限界を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和25(オ)383 / 裁判年月日: 昭和28年12月28日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第三条第一項または同条第五項の特定の号に該当するものとして定められた農地買収計画を、訴願裁決で右農地は右特定の号にはあたらないが、同項の他の号に該当するものとして維持することはゆるされない。
事件番号: 昭和27(オ)357 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が…
事件番号: 昭和27(オ)679 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号による宅地の買収は、公共のためであつて、憲法第二九条第三項に違反しない。