自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号による宅地の買収は、公共のためであつて、憲法第二九条第三項に違反しない。
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号による宅地の買収と憲法第二九条第三項
自作農創設特別措置法15条1項,憲法29条3項
判旨
自作農創設特別措置法に基づく宅地の買収は、耕作者の地位安定と農業生産力発展という公共の福祉を目的とするものであり、特定の個人に売り渡される結果を伴うとしても憲法29条3項に違反しない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づき宅地を買収し、特定の耕作者に売り渡すことが、公共の福祉による必要性を欠き、憲法29条3項に違反しないか。
規範
自作農創設特別措置法に基づく農地や宅地の買収・売渡しは、自作農の急速かつ広汎な創設、農業生産力の発展、農村の民主化という「公共の福祉」を目的とした制度である。したがって、買収された土地が特定の買収申請者に売り渡されるとしても、それは法の目的を達成するための運用上の必然的な結果であり、これをもって公共性を欠くと判断されることはない。
重要事実
買収対象となった本件宅地について、買収申請者ら(E、F、G、H)は賃借権または使用貸借権を有していた。彼らは当該宅地上に住家や牛小屋等を建設し、そこから一定の距離(20間から8丁余)にある解放農地の耕作に従事していた。上告人は、本件買収が特定個人4名の利益を図るものであり、憲法29条3項の「公共のために用いる」という要件を欠き違憲であると主張した。
事件番号: 昭和26(オ)922 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく宅地等の附帯買収は、売渡農地と密接不可分の関係にあることを要せず、当該農地の耕作のために必要と認められる限り適法である。また、このような買収は公共の福祉の必要から行われるものであり、憲法29条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人が所有する本件宅地について、行政庁が自…
あてはめ
本件宅地の利用状況を見ると、申請者らは当該宅地上の住家等を拠点として解放農地の耕作に従事しており、本件宅地は農地経営上必要なものとして買収適格を具備している。また、農地改革の目的は、耕作者の地位安定や農業上の利用増進を図ることであり、これは公共の福祉に合致する。買収後の土地が特定の者に売り渡されるとしても、それは農地改革という公共の福祉を実現するための当然の結果であり、私的な利益付与にすぎないということはできない。
結論
本件買収は、公共の福祉に基づく正当な目的を有するものであり、憲法29条3項に違反しない。したがって、本件宅地の買収を適法とした原審の判断は正当である。
実務上の射程
財産権の制限と「公共のために用いる」の意義に関する重要判例である。農地改革のような大規模な社会政策において、個別の処分結果が特定の個人を利する形になっても、全体の目的が公共の利益に資するものであれば公共性を具備するという論理構成は、公用収用や土地利用規制の文脈で準用可能である。
事件番号: 昭和26(オ)279 / 裁判年月日: 昭和29年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号による宅地・建物の買収は、公共の福祉の必要から行われるものであり、憲法14条及び29条に違反しない。また、買収対象となる宅地・建物は、売渡農地と密接不可分である必要はなく、自作農となるべき者の農業経営に必要と認められれば足りる。 第1 事案の概要:上告人は、自創法…
事件番号: 昭和25(オ)236 / 裁判年月日: 昭和29年7月19日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員が、県農地委員会の委員して、右計画に対する訴願裁決に関与することは違法ではない。 二 行政事件訴訟特例法第一一条によつて農地買収計画に関する訴願裁決の取消を求める請求を棄却するについて、単に一般的に農地買収は公共の福祉のためになされる旨を判示し、具体的に当該事件につい…
事件番号: 昭和27(オ)773 / 裁判年月日: 昭和29年2月19日 / 結論: 棄却
村農地委員会が自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に該当する農地として定めた買収計画について、その農地が同条第五項第二号に該当する故をもつて、農地所有者の申し立てた異議を斥けることは違法ではない。
事件番号: 昭和27(オ)537 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
農地委員会は、未墾地の所有者が自ら開墾する意思を表明したからといつて、必ずしもこれに拘束されるものではなく、自作農創設特別措置法の趣旨目的に基き諸般の事情を考量し、もつとも適当と認めるところに従つて買収計画を定むべきかどうかを決することができる。