自作農創設特別措置法第三条第一項または同条第五項の特定の号に該当するものとして定められた農地買収計画を、訴願裁決で右農地は右特定の号にはあたらないが、同項の他の号に該当するものとして維持することはゆるされない。
自作農創設特別措置法第三条第一項または同条第五項の特定の号に該当するものとして定められた農地買収計画を、訴願裁決で右第五項の他の号に該当するものとして維持することの可否
自作農創設特別措置法3条1項5項,自作農創設特別措置法6条1項,自作農創設特別措置法7条
判旨
農地買収処分は、市町村農地委員会が定めた農地買収計画に基づき行われるべき不可分一体の処分であり、目的物が計画の根拠とされた特定の農地区分に該当しない場合は、仮に他の買収対象農地に該当するとしても、当該買収処分は違法となる。
問題の所在(論点)
農地買収処分において、目的物が買収計画で指定された農地の種類(自創法3条1項・5項各号)に該当しない場合、その土地がたまたま他の号の買収対象農地に該当するとしても、当該買収処分は適法といえるか。買収計画と買収処分の関係が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法に基づく買収処分は、市町村農地委員会が定める農地買収計画(同法6条1項)に基づき行われるべきものであり、両者は不可分一体をなす。したがって、買収処分の有効要件としては、単に目的物が同法3条各号のいずれかに該当するだけでなく、買収計画において根拠とされた特定の農地区分に該当することを要する。一の農地として立てられた買収計画を、他の区分の農地としての計画と読み替えることは許されない。
重要事実
市町村農地委員会(A地区農地委員会)が、特定の農地について買収計画を立てたが、その計画の根拠とされた農地の区分が、実際の土地の状態とは異なっていた。県農地委員会は、裁決において当該計画を審査したが、買収の根拠となる区分が異なっているにもかかわらず、買収処分を正当化しようとした。これに対し、買収処分の有効性が争われた。
事件番号: 昭和37(オ)661 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
農地買収計画の適否は、当該計画樹立当時の状況において判断すべきである。
あてはめ
買収計画は、目的物が同法3条各号のいずれに該当するかを精査して立てられるべきであり、漫然とした予想で立てることは許されない。同法3条1項と5項各号では買収理由が異なり、買収後の自作農への帰属関係や、委員会による認定行為の判断内容も異なる。したがって、計画の根拠とされた区分に該当しない以上、たとえ他の買収対象農地に該当したとしても、その計画に基づく買収は根拠を欠くことになり、被買収者の利害を考慮すれば適法化することはできない。また、県農地委員会が裁決により、原計画と異なる新たな計画を実質的に定めることも権限外である。
結論
本件買収処分は違法である。目的物が買収計画の根拠とされた農地の区分に該当しないときは、たとえ他の買収し得べき農地に該当する場合であっても、当該計画に基づき買収することはできない。
実務上の射程
行政処分の先行行為(計画)と後続行為(処分)が不可分一体である場合、先行行為で特定された処分の根拠事由が客観的事実と合致しない限り、後続の処分も違法となることを示した。行政過程の法的拘束性と、根拠条項の峻別の重要性を説く文脈で活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)3 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。
事件番号: 昭和27(オ)773 / 裁判年月日: 昭和29年2月19日 / 結論: 棄却
村農地委員会が自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に該当する農地として定めた買収計画について、その農地が同条第五項第二号に該当する故をもつて、農地所有者の申し立てた異議を斥けることは違法ではない。