判旨
立木の違法伐採による損害賠償額は、特段の事情がない限り、伐採当時の時価相当額により算定すべきである。将来の成長による得べかりし利益を合算するには、時価による算定を不相当とする特別の事情の主張立証を要する。
問題の所在(論点)
立木の不法伐採による損害賠償額を算定する際、将来の成長による得べかりし利益を当然に加算すべきか、それとも伐採当時の時価を基準とすべきか。また、その算定基準を左右する「特別の事情」の主張立証責任はどちらが負うか。
規範
不法行為に基づく損害賠償額の算定において、立木が伐採された場合の損害は、原則として伐採当時の時価相当額による。伐採当時の時価を超える額(将来の成長による得べかりし利益等)を損害として認めるためには、当該時価による算出を不相当とする「特別の事情」が認められることを要し、その主張立証責任は賠償を求める側にある。
重要事実
上告人の所有する杉立木が、被上告人によって不法に伐採された。上告人は、損害額の算定にあたり、伐採当時の時価のみならず、将来その杉が成長することによって得られたはずの利益(成長益)を加算すべきであると主張した。原審は、本件において時価による算定を不相当とする特別事情は認められないとして、伐採当時の時価に基づき損害額を算定したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、上告人は杉の成長益の加算を求めているが、損害額を伐採当時の時価で算出することを不相当とする「特別の事情」についての具体的な説明や立証がなされていない。損害額発生の事情は、それ以上の額を求める上告人自らが明らかにすべき事柄であり、裁判所が釈明を行うべき性質のものでもない。したがって、特段の事情がない本件では、伐採当時の時価をもって損害額とするのが相当である。
結論
杉立木の伐採による損害額は、特別の事情がない限り伐採当時の時価により算定される。将来の成長利益を合算しなかった原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
物の滅失・毀損による損害賠償における原則的な算定時期(不法行為時)を確認した判例である。答案上は、不法行為の損害額算定において、中間利息の控除や将来の価格騰貴・成長益を議論する際、原則として「処分時(伐採時)の時価」によることを示し、例外を認めるためのハードル(特別事情の主張立証責任)を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)565 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第一五条の規定により宅地を附帯買収する場合において、その宅地上に生立する樹木が、買収対価の算定上宅地自体の買収対価とは別に考慮を払うことを必要とする程度の価額を有するものであるときは、右宅地の買収処分の効果は、右樹木には及ばないと解するのが相当である。
事件番号: 昭和33(オ)586 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】立木の損害賠償額を算定する際、特別の事情のない限り、立木を適正伐採期まで成長させて売却するのが最も利益であるため、適正伐採期における交換価格に相当する額を損害と認めることができる。 第1 事案の概要:上告人が、被上告人の所有する杉立木を損傷または滅失させた事案。原審は、熊本県内における杉の造林につ…