甲が山林を通常の方法すなわち該山林の立木をその適正伐採期において伐採収穫する方法により経営していた場合において、乙が右事実を知りながら該立木を不法に伐採したときは、乙の甲に対する損害賠償額の範囲は、特段の事情がないかぎり、右適正伐採期における立木の価額によつて算定すべきである。
立木の不法伐採による損害賠償額算定の基準。
民法709条,民法416条2項
判旨
山林の立木が不法に伐採された場合の損害額は、通常の経営管理が行われている限り、適正伐採期における価格を基準とすべきであり、これは民法416条2項の特別事情による損害にあたる。
問題の所在(論点)
山林の立木が不法に伐採された場合、損害賠償額の算定基準となる時期はいつか。また、将来の適正伐採期における価格を基準とする損害は、民法416条2項の「特別の事情によって生じた損害」にあたるか。
規範
山林経営において立木を適正伐採期まで育成し収穫することは通常の管理方法である。したがって、不法伐採による損害は、原則として適正伐採期における価格を基準とする。ただし、加害者が被害者の通常の経営管理の事実を予見し、または予見し得た場合に限り、民法416条2項の特別事情による損害としてその賠償を請求できる。
重要事実
山林所有者である控訴人と、立木伐採販売業者である被控訴人の間で、立木搬出用施設の構築およびその妨げとなる立木の伐採・取得に関する約定が成立した。被控訴人は約定の範囲を超えて立木を伐採した。控訴人は本件山林以外にも山林を所有し、通常の経営管理を行っていた。また、被控訴人は、控訴人が山林を通常の方法で管理していることを知っていた。
あてはめ
控訴人は山林経営者として通常の管理を行っており、被控訴人もその事実を認識していた。この場合、将来の適正伐採期(本件では昭和32年12月)まで立木を育成して収穫を得ることは、客観的に予見可能な特別の事情にあたる。したがって、伐採時ではなく、適正伐採期における立木価格をもって損害額と算定するのが相当である。なお、適正期以外に伐採収穫する特段の事情は認められない。
結論
被控訴人は、適正伐採期における価格に基づき、支払済みの対価(500円相当)を控除した残額について、民法416条2項に基づく損害賠償義務を負う。
実務上の射程
不法行為または債務不履行による損害賠償において、中間利息の控除(ホフマン・新ホフマン等)を検討する前提となる「基準時」の議論に活用できる。特に長期間の育成を前提とする山林や果樹等の事案において、将来の収益を損害として構成する際の有力な規範となる。
事件番号: 昭和27(オ)34 / 裁判年月日: 昭和28年10月15日 / 結論: 棄却
一 物の引渡を目的とする債務の不履行による契約解除を理由として損害賠償の請求がなされる場合において、右損害額の算定には特別の事情がないかぎり契約解除当時における目的物の価格を標準とすべきである。 二 右の場合において、物価庁告示の公定価格により損害額を算定することは違法でない。