一 物の引渡を目的とする債務の不履行による契約解除を理由として損害賠償の請求がなされる場合において、右損害額の算定には特別の事情がないかぎり契約解除当時における目的物の価格を標準とすべきである。 二 右の場合において、物価庁告示の公定価格により損害額を算定することは違法でない。
一 民法第五四五条第三項による損害賠償請求について損害額算定の標準とすべき時期 二 損害額の算定につき物価庁告示の公定価格によることの適否
民法545条3項,民法415条
判旨
売買契約の債務不履行に基づく損害賠償額の算定時期について、特別の事情のない限り、契約解除当時における価格を基準とすべきであると判示した。
問題の所在(論点)
売買契約の解除に伴う損害賠償請求において、損害額を算定すべき基準時期はいつか。また、公定価格が存在する場合にそれを基準とすることは許されるか。
規範
売買契約が解除された場合における債務不履行による損害賠償額の算定は、特別の事情のない限り、契約解除当時における価格を基準として算定すべきである。
重要事実
上告人と被上告人との間で立木の売買契約が締結されたが、その後契約が解除された。損害額の算定にあたり、原審は物価庁告示の公定価格を基準とし、かつ「契約解除当時」の価格に基づき算定した。これに対し、上告人は当時の統制法規の存在や算定基準の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件において、立木の売買を禁ずる統制法規の存在は認められず、木材の統制規定が直ちに立木売買に適用されるものではない。そのため、原審が物価庁告示の公定価格を損害算定の基礎としたことは相当である。また、損害賠償制度の趣旨に照らせば、契約が解消された時点での補填を認めるべきであるから、特段の事情がない本件では、履行遅滞や履行不能の時点ではなく「契約解除当時」の価格を基準とした原審の判断に違法はない。
結論
損害賠償額は、原則として契約解除当時の価格を基準に算定すべきである。本件の損害額算定に法令違反は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、解除による損害賠償(民法545条4項、415条)の算定基準時を解除時とする原則を示したものである。答案上は、履行不能時や事実審口頭弁論終結時を基準とする説との対比で、解除による契約の遡及的消滅と信頼利益・履行利益の保護の観点から時期を特定する際に用いる。ただし、「特別の事情」がある場合には価格騰貴等の考慮があり得る点に留意が必要である。
事件番号: 昭和37(オ)444 / 裁判年月日: 昭和39年6月23日 / 結論: 棄却
甲が山林を通常の方法すなわち該山林の立木をその適正伐採期において伐採収穫する方法により経営していた場合において、乙が右事実を知りながら該立木を不法に伐採したときは、乙の甲に対する損害賠償額の範囲は、特段の事情がないかぎり、右適正伐採期における立木の価額によつて算定すべきである。