一 賃貸人の債務不履行による土地賃貸借解除に基づき賃借人の賃貸人に対して請求する借地権喪失による損害賠償の範囲は、右解除当時における当該借地権の価格によるべきである。 二 土地賃貸借解除に基づく賃借人の賃貸人に対して請求する損害賠償額算定の基準としての借地権の評価につき、転貸禁止の特約の有無は影響しない。
一 賃貸人の債務不履行による土地賃貸借解除と損害賠償の範囲 二 転貸禁止の特約の有無は借地権の評価に影響するか
民法543条,民法545条3項
判旨
賃貸借契約の解除に伴う損害賠償額の算定において、その基準となるべき時期は解除当時である。また、賃借権はそれ自体が独立した価値を有するため、転貸禁止の約定がある場合であっても、特段の事情がない限り賃借権の評価を減殺するものではない。
問題の所在(論点)
賃貸借契約解除に基づく損害賠償額算定の基準時期はいつか。また、転貸禁止特約や賃借人の個人的属性は、賃借権の価格算定において考慮されるべきか。
規範
債務不履行を理由とする契約解除に基づく損害賠償額は、原則として解除当時における対象物の価格を基準として算定すべきである。また、土地賃借権の価格を算定するにあたり、賃借人の個人的属性や転貸禁止の約定の存在は、賃借人が土地を使用収益することによる利益の評価を左右するものではない。
重要事実
被上告人(賃借人)と上告人(賃借人ら)との間で成立した土地賃貸借契約について、上告人側の債務不履行を理由に、被上告人が昭和32年1月24日に契約を解除した。当該土地には第三者が占拠しており、被上告人は使用収益ができない状態にあった。上告人側は、損害額の算定基準を履行不能時とすべきであること、被上告人が官吏で他に住宅を有していること、及び転貸禁止特約があるため賃借権の交換価値は認められないことなどを主張して争った。
あてはめ
解除による損害賠償は、解除によって失われた利益を填補するものであるから、解除当時の価格によるべきである。本件では昭和32年の解除時を基準とした原審の判断は正当である。次に、賃借権の価値は賃借人が土地を使用収益すること自体に存する。したがって、被上告人が官吏であることや他に住宅を有することは、賃借権喪失による損害の有無に影響しない。さらに、転貸禁止の約定は、賃借人自らが使用収益する利益を何ら損なうものではないため、賃借権の価格評価を妨げる要素とはならない。
結論
契約解除に伴う損害賠償額は解除当時を基準に算定し、転貸禁止等の事情があっても賃借権自体の価値を基礎として損害を認めるべきである。
実務上の射程
契約解除による損害賠償の基準時について、原則として解除時であることを示した実務上重要な判例である。転貸制限がある賃借権であっても、自ら利用する利益を根拠に高い評価額が認められる点、損害論の論証で有用である。
事件番号: 昭和37(オ)444 / 裁判年月日: 昭和39年6月23日 / 結論: 棄却
甲が山林を通常の方法すなわち該山林の立木をその適正伐採期において伐採収穫する方法により経営していた場合において、乙が右事実を知りながら該立木を不法に伐採したときは、乙の甲に対する損害賠償額の範囲は、特段の事情がないかぎり、右適正伐採期における立木の価額によつて算定すべきである。