判旨
立木の損害賠償額を算定する際、特別の事情のない限り、立木を適正伐採期まで成長させて売却するのが最も利益であるため、適正伐採期における交換価格に相当する額を損害と認めることができる。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく立木の損害賠償請求において、損傷時ではなく将来の「適正伐採期」における交換価格を基準に損害額を算定することの是非、およびその予見可能性が問題となった。
規範
不法行為等による損害賠償において、特別の事情がない限り、所有者は目的物を最も利益となる方法で活用・処分するのが通例である。したがって、将来において確実に収穫・売却が見込まれる物については、その適正な収穫(伐採)時期における交換価格を基準として損害額を算定することが認められ、また、加害者にとってもそのような運用は予見可能な範囲内にあるものと解される。
重要事実
上告人が、被上告人の所有する杉立木を損傷または滅失させた事案。原審は、熊本県内における杉の造林について、所有者は特別の事情がない限り適正伐採期まで成長させてから伐採・売却するのが最も利益であり、かつ通例であると認定した。その上で、本件杉立木の適正伐採期における交換価格(54万円の一部等)を損害額として算定したところ、上告人が予見可能性の欠如や二重利得を理由に上告した。
あてはめ
杉の造林においては、適正伐採期まで待って売却することが経済的に最も合理的であり、一般的な所有者の行動態様といえる。本件においても、適正伐採期まで成長させた後の利益を基準とすることは、損害賠償制度の目的である現状回復の観点から合理的である。また、このような算定方法は業界の通例に基づくものであり、加害者にとっても予見し得べき特別な事情(民法416条2項参照)に該当するといえる。二重利得の主張についても、算定根拠が明確である以上、理由がない。
結論
適正伐採期における交換価格を基準とした損害賠償額の算定は適法であり、上告を棄却する。
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…
実務上の射程
成長過程にある動産や不動産の付着物について、いつの時点の価格を損害とするかの基準を示す。特に農作物や林産物など、一定期間の経過により価値が最大化する性質を持つ目的物の損害算定において、将来の収穫価格を基準とする主張を裏付ける際に有用である。
事件番号: 昭和31(オ)926 / 裁判年月日: 昭和32年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買において代金額を算定する基礎として、目的物の一定の数量を指示してなされた契約は、民法565条(数量指示売買)に該当する。 第1 事案の概要:上告人と相手方との間で本件立木の売買契約が締結された。その際、立木の数量を3万石と明示(指示)し、単価を1石当たり50円と定めて代金額を決定した。後に実際…
事件番号: 昭和32(オ)356 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が係争地の具体的地域を特定し、祖先伝来の所有地であると主張して所有権確認を求めている場合、当該土地につき請求を認容することは、処分権主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人は、第一審から本件係争地の具体的地域を明らかにしていた。その上で、原審において、当該土地は祖先伝来の所有地であると主…
事件番号: 昭和35(オ)86 / 裁判年月日: 昭和37年3月2日 / 結論: 棄却
山林の入口、山林内路傍、山林頂上の三ケ所の立木に、幅約二〇糎、長さ約四五糎、厚さ約二糎の板に、「a山林六町七反八畝歩は名義人において買受けたから伐採を禁ずる」旨記載した立札を釘で打付けたこと、右山林は俗にbと呼ばれていることの事実があるときは、右立札による公示は、右山林内の立木所有権の明認方法として有効である。
事件番号: 昭和36(オ)208 / 裁判年月日: 昭和38年12月13日 / 結論: 棄却
他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けてその時から右立木のみにつき所有の意思をもつて平穏かつ公然に二〇年間占有した者は、時効により右立木の所有権を取得する。