判旨
売買において代金額を算定する基礎として、目的物の一定の数量を指示してなされた契約は、民法565条(数量指示売買)に該当する。
問題の所在(論点)
立木の売買において、数量を指示し単価を定めて代金額を決定した場合、民法565条(数量指示売買)の要件を充足するか。
規範
民法565条の「数量を指示して」なした売買(数量指示売買)とは、当事者において目的物の特定の数量があることに主眼を置き、代金額もその数量を基礎として定められた売買をいう。
重要事実
上告人と相手方との間で本件立木の売買契約が締結された。その際、立木の数量を3万石と明示(指示)し、単価を1石当たり50円と定めて代金額を決定した。後に実際の数量が不足していることが判明したため、買主側が数量指示売買に基づく責任を追及した(なお、詳細な不足分等の事実は判決文からは不明)。
あてはめ
本件売買では、契約に際して立木の数量を「3万石」と具体的に指定している。さらに、代金額の決定方法として「1石当たり50円」という単価による算定方法を採用している。このように、一定の数量が存在することを前提とし、その数量が代金算定の基礎となっている以上、当事者は目的物の数量に主眼を置いたものと評価できる。
結論
本件売買契約は、民法565条にいう「数量を指示してなした売買」に該当する。
実務上の射程
本判決は、土地だけでなく立木等の動産類似の目的物であっても、数量が代金決定の基礎となれば数量指示売買に当たり得ることを示している。答案上は、代金額の決定過程において、客観的な数値が合意の要素となっていたかを検討する際の根拠となる。改正民法下においても、種類・品質・数量に関する契約不適合責任(562条以下)の適用を判断する際の指標として機能する。
事件番号: 昭和24(オ)305 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
事件番号: 昭和33(オ)586 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】立木の損害賠償額を算定する際、特別の事情のない限り、立木を適正伐採期まで成長させて売却するのが最も利益であるため、適正伐採期における交換価格に相当する額を損害と認めることができる。 第1 事案の概要:上告人が、被上告人の所有する杉立木を損傷または滅失させた事案。原審は、熊本県内における杉の造林につ…
事件番号: 昭和32(オ)355 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
物件変動の対抗要件としての明認方法は、第三者が利害関係を取得した当時にも存在するものでなければ、これをもつて当該第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和35(オ)86 / 裁判年月日: 昭和37年3月2日 / 結論: 棄却
山林の入口、山林内路傍、山林頂上の三ケ所の立木に、幅約二〇糎、長さ約四五糎、厚さ約二糎の板に、「a山林六町七反八畝歩は名義人において買受けたから伐採を禁ずる」旨記載した立札を釘で打付けたこと、右山林は俗にbと呼ばれていることの事実があるときは、右立札による公示は、右山林内の立木所有権の明認方法として有効である。