本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
代金額の不一致による契約の不成立
判旨
売買契約等の契約成立には代金額等の重要事項に関する合意が必要であり、代金額を定めない申入れに対し相手方が代金額を定めて回答し、これに異議を唱え続けた場合は、契約は成立しない。
問題の所在(論点)
当事者間で代金額について合意に達せず、一方が提示した額を他方が争い続けている状況において、契約の成立を認めることができるか。
規範
契約が成立するためには、当事者の意思表示の内容が合致していなければならない。特に売買契約等の有償契約においては、その本質的要素である代金額について合意がなされていることが原則として必要である。代金額の提示とそれに対する拒絶・争いがある場合、特段の事情がない限り、意思表示の合致がなく契約は成立しなかったものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は代金額を定めずに契約の申入れを行ったが、被上告人はこれに対し代金額を特定して回答した。上告人はこの代金額を争い、その後、被上告人が提示した代金額を受諾すべき旨の申入れを数回にわたり繰り返したにもかかわらず、上告人はこれに応じなかった。上告人は、このような状況下でも延期契約が成立したと主張して本訴を提起した。
あてはめ
本件では、上告人と被上告人の間で代金額に関する意思表示の合致が認められない。上告人が代金額を定めない申入れをしたのに対し、被上告人は代金額を指定して返答しており、これは新たな申込み(又は変更を加えた承諾)にあたる。上告人はこの金額を争い、被上告人による数回の受諾督促にも応じていない。このような「代金額の不一致」がある場合、社会通念上、契約が成立したと見ることはできない。したがって、契約成立の主張立証がなされたとはいえない。
事件番号: 昭和31(オ)926 / 裁判年月日: 昭和32年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買において代金額を算定する基礎として、目的物の一定の数量を指示してなされた契約は、民法565条(数量指示売買)に該当する。 第1 事案の概要:上告人と相手方との間で本件立木の売買契約が締結された。その際、立木の数量を3万石と明示(指示)し、単価を1石当たり50円と定めて代金額を決定した。後に実際…
結論
代金額の不一致により契約は成立しておらず、契約成立を前提とする上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
契約成立の成否が争点となる事案において、代金額等の本質的要素について合意がない場合に「意思表示の合致」を否定するための基礎的な判断枠組みとして活用できる。特に、交渉過程で条件が折り合わなかった場合に、黙示の合意や事後的な成立を否定する際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)791 / 裁判年月日: 昭和33年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の当事者間で共有の約定がなされたと主張される場合であっても、一方の代理人との間で意思表示の合致が認められないときは、共有の合意は成立しない。また、裁判所がある事実の認定に際し、同一証人の証言の一部を採用し、他の一部を排斥することは適法である。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の代理人D、およ…
事件番号: 昭和34(オ)566 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 破棄差戻
一方において売買予約の成立を推定するに足る間接事実を認定しておきながら、他方首肯するに足る理由を示すことなく売買予約の成立を否定した原判決には、審理不尽理由不備則の違法がある。
事件番号: 昭和31(オ)549 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実体上の権利に基づかない増歩登記(地積増加の登記)は無効であり、それにより不動産所有権を取得したとは認められない。また、不法行為者は民法177条にいう「第三者」に該当しないため、真実の所有権者は登記なくして所有権を対抗できる。 第1 事案の概要:上告人は、係争土地(無地番の山林)が隣接する自己所有…