判旨
複数の当事者間で共有の約定がなされたと主張される場合であっても、一方の代理人との間で意思表示の合致が認められないときは、共有の合意は成立しない。また、裁判所がある事実の認定に際し、同一証人の証言の一部を採用し、他の一部を排斥することは適法である。
問題の所在(論点)
1. 代理人との協議において、共有とする旨の意思表示の合致がない場合に契約の成立が認められるか。2. 同一証人の証言の一部のみを事実認定の基礎とし、他の部分を排斥することは許されるか。
規範
契約が成立するためには、当事者間において申込みと承諾という意思表示の合致が必要である。また、証拠調べにおける自由心証主義の観点から、裁判所は証人の証言の一部を信認し、他の部分を信じないという証拠の取捨選択を自由に行うことができ、その理由を必ずしも判示することを要しない。
重要事実
上告人と被上告人の代理人D、および訴外Eの三者は、本件立木の入札にあたり、Dに最高価で入札させる協定を結んだ。上告人は、この入札の結果として被上告人が立木を買い受けた場合には、三者の内部関係においてこれを共有とする旨の約定(本件約定)が成立したと主張した。しかし、原審はDとの間で本件約定に関する意思表示の合致がなかったと認定した。また、原審は証人の証言について一部を採用し、他の一部を排斥する形で事実認定を行ったため、上告人がこれを違法であるとして争った。
あてはめ
1. 本件約定について検討するに、被上告人の代理人Dとの間で最高価入札の協定自体は成立しているものの、買い受けた後の共有関係については、意思表示の合致があったとは認められない。したがって、錯誤による無効を論じるまでもなく、契約自体が成立に至っていないと解される。2. 証拠の評価について、裁判所が特定の証人の証言のうち、一部を合理的として採用し、他の事実に反する部分を排斥することは、特段の事情がない限り自由心証主義の範囲内であり、その取捨選択の理由を詳述しなかったとしても判決の違法とはならない。
結論
本件約定は意思表示の合致がなく不成立であり、また原審の証拠評価に違法はない。したがって、上告は棄却される。
事件番号: 昭和24(オ)305 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
実務上の射程
契約成立の成否が争われる場面において、合意の範囲(どの範囲で意思の合致があったか)を厳格に画定する際の参考となる。また、事実認定のプロセスにおいて、証言の「つまみ食い」的採用が自由心証主義に基づき許容されることを示す実務上の先例として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)277 / 裁判年月日: 昭和30年1月28日 / 結論: 棄却
裁判長たる裁判官が、当事者の一方の訴訟代理人の女婿であるからといつて、民訴第三七条第一項にいわゆる裁判の公正を妨ぐべき事情があるものとはいえない。
事件番号: 昭和33(オ)792 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証人の証言の一部を採用し、他の部分を措信しないという自由な評価を行うことが認められる。また、当事者の主張と供述が一貫している場合には、それに基づき事実を認定することが可能である。 第1 事案の概要:被上告人は、係争地を含む山林を買い受けたと主張していた。第一審および第二審において、証人D…
事件番号: 昭和31(オ)926 / 裁判年月日: 昭和32年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買において代金額を算定する基礎として、目的物の一定の数量を指示してなされた契約は、民法565条(数量指示売買)に該当する。 第1 事案の概要:上告人と相手方との間で本件立木の売買契約が締結された。その際、立木の数量を3万石と明示(指示)し、単価を1石当たり50円と定めて代金額を決定した。後に実際…
事件番号: 昭和34(オ)566 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 破棄差戻
一方において売買予約の成立を推定するに足る間接事実を認定しておきながら、他方首肯するに足る理由を示すことなく売買予約の成立を否定した原判決には、審理不尽理由不備則の違法がある。