一 山林の不法伐採禁止を請求された者が、「伐採個所は隣接する長男所有地の境界内の土地で約二十五年間継続して占有し植林、刈払いの手入れをして来た」等、原判決記載のような主張(原判決事実摘示参照)をして不法伐採の事実を争つた場合に、右土地に対する時効取得の有無を問うことなく同人を敗訴させても、釈明権不行使の違法ありとすることはできない。 二 係争山林の境界につき実測図の作成を命ぜられた鑑定人が、訴訟手続外で入手した図面を資料として鑑定書を作成した場合でも、正確な図面と判定して資料にしたものと認められるときは、その鑑定の結果を証拠に採用しても違法でない。 三 相隣者との間で境界を定めた事実があつても、これによつて、その一筆の土地の固有の境界自体は変動するものではない。
一 釈明権不行使の違法のない事例 二 訴訟手続外の資料を使用した鑑定とその採用の当否 三 当事者の境界の合意と固有の境界の変動の有無
民訴法127条,民訴法185条,民訴法第2編第3章第3節(301条の前),民法223条
判旨
不動産(一筆の土地)の客観的な境界は、当事者の合意によって自由に変更・処分することはできず、当事者間の境界合意は裁判所による客観的境界の判定における証拠資料の一つに留まる。
問題の所在(論点)
異筆の土地の境界を画定するにあたり、当事者間になされた境界に関する合意は裁判所を拘束するか。すなわち、境界の合意によって客観的境界を変更・処分しうるか。
規範
隣り合う土地(異筆の土地)の間の境界は、当該土地を各別に公法的に区分するものとして客観的に固定している。したがって、私法上の合意によってこの客観的境界を自由に変更・処分することはできない。当事者間に境界に関する合意が存在したとしても、それは裁判所が客観的な境界を判定する際の一つの資料(証拠)としての意義を有するにすぎない。
重要事実
上告人は、一筆の土地であるa番山林と隣地であるb番のc山林について、特定の線を境界と指示して引渡しを完了したと主張した。上告人は、この境界の合意に基づいて境界が確定されるべきであると争ったが、原審は証拠に基づき、当事者が主張する線とは異なる客観的境界を判定した。これに対し上告人が、合意に反する境界判定は違法であるとして上告した事案である。
あてはめ
本件における境界は、a番山林とb番のc山林という「異筆の土地」の間の境界である。このような境界は、土地が別個の登記単位として区別されるために客観的に固有する性質を持つ。したがって、当事者が特定の線を境界として引渡しを行ったという事実(合意)があったとしても、それは裁判所が客観的境界を認定するための「一資料」にすぎない。裁判所が他の証拠(鑑定結果等)に基づき、合意と異なる客観的な境界を判定することは何ら妨げられない。
結論
隣接する土地の境界は当事者の合意で変更できるものではなく、裁判所は合意に拘束されずに客観的境界を確定できる。
実務上の射程
境界確定訴訟(実質的形成訴訟)において、境界は公法的な線であり私法上の処分権が及ばないことを示す標準的な判例である。答案上は、当事者の主張する境界と裁判所の認定が異なる場合に「処分権主義の妥当しない領域」であることを説明する根拠として用いる。なお、所有権の範囲に関する合意(所有権移転)とは別問題である点に注意を要する。
事件番号: 昭和24(オ)305 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
本件の様に、上告人の代金額を定めない申入れに対し被上告人から代金額を定めた返答があり、これに対して上告人が代金額を争い、両三回に亘り被上告人から被上告人の定めた代金額を受諾すべき旨の申入があつたに拘わらず、上告人がこれに応じなかつた如き場合においては代金額の不一致により契約が成立しなかつたものと見るのが通常である。
事件番号: 昭和35(オ)1381 / 裁判年月日: 昭和37年1月18日 / 結論: 棄却
改正条例に基づく山林払下げの議決が、右条例改正の告示前になされた場合でも、同改正条例の付則に告示前から施行する旨の規定がある以上、地方自治法第一六条第三項の規定にかかわらず告示とともに議決が遡及して効力を生ずるとした原審判断の当否は、ともあれ、右議決に基づく売却処分そのものが告示的になされている本件としては、右売却処分…
事件番号: 昭和40(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和41年10月7日 / 結論: 棄却
いわゆる伝聞証言の証拠能力は当然に制限されるものではなく、伝聞証言の採否は、裁判官の自由な心証による判断に委されているものと解すべきである。