賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては、右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債務者は、右債権の譲受人に対して右債権の発生に係る契約の公序良俗違反による無効を主張してその履行を拒むことができる。
賭博債権の譲渡を異議なく承諾した債務者が右債権の譲受人に対して賭博契約の公序良俗違反による無効を主張することの可否
民法90条,民法468条
判旨
賭博債権の譲受人に対し、債務者が異議なく承諾をした場合でも、信義則に反する等の特段の事情がない限り、債務者は公序良俗違反による無効を主張して履行を拒める。賭博債権の満足を禁止する法の要請は、債権譲受人の利益保護の要請を上回るからである。
問題の所在(論点)
賭博債権という公序良俗に反し無効な債権が譲渡された際、債務者が異議を留めずに承諾した場合には、民法上の抗弁喪失の原則により、債務者は譲受人に対して無効を主張できなくなるのか。公序良俗違反の強行性と、取引の安全のいずれが優先されるかが問題となる。
規範
賭博債権の譲渡において、債務者が異議を留めずに承諾(旧民法468条1項)した場合であっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債務者は譲受人に対して当該債権の公序良俗違反(民法90条)による無効を主張して履行を拒むことができる。その理由は、賭博行為は公序良俗に反する程度が著しく、賭博債権の満足を禁止すべき法の要請が、抗弁喪失の制度による譲受人の保護を上回る点にある。
重要事実
Dは、被上告人(債務者)に対する賭博の負け金7000万円の支払を目的とする債権を、上告人(譲受人)に譲渡した。被上告人は、同日、この債権譲渡について異議を留めずに承諾した。その後、譲受人である上告人が被上告人に対し、当該債権の支払を求めて提訴した。
事件番号: 平成23(受)2094 / 裁判年月日: 平成25年2月28日 / 結論: その他
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。 2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用され…
あてはめ
本件における債権の発生原因は賭博の負け金であり、公序良俗に反し無効である。被上告人は異議なく承諾しているものの、賭博債権の満足を阻止すべき法の要請は極めて強い。本件において被上告人に信義則に反するような「特段の事情」があるとの主張・立証はなされていない。したがって、被上告人は依然として譲受人に対し無効を主張できるというべきである。
結論
被上告人は上告人に対し、公序良俗違反による無効を理由に履行を拒むことができる。上告人の支払請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
本判例は旧民法468条1項下のものであるが、現行法(468条1項)において「対抗することができた事由」の解釈としても重要である。公序良俗違反の対象が賭博以外の場合にどこまで広がるかは慎重な検討を要するが、答案上は、制度的信頼よりも優先されるべき強烈な社会的非難を伴う無効事由がある場合に、抗弁喪失(ないし対抗制限)を否定する法理として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)656 / 裁判年月日: 昭和34年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が予め債権譲渡に同意を与えていた場合には、譲渡後に改めて民法467条1項所定の通知又は承諾がなくとも、債権譲受人は債務者に対して債権譲渡を対抗することができる。 第1 事案の概要:債権譲渡が行われる際、債務者はあらかじめその譲渡について同意を与えていた。その後、譲受人は債務者に対し債権譲渡の…
事件番号: 平成19(受)528 / 裁判年月日: 平成20年2月22日 / 結論: 破棄差戻
1 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負う。 2 会社の貸付けが当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものとみる余地があっても,それだけでは当該会社の事業と無関係であることの立証がされたということ…
事件番号: 平成6(オ)1379 / 裁判年月日: 平成10年7月17日 / 結論: 破棄自判
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。
事件番号: 昭和49(オ)1019 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
準禁治産者が取消の対象である金銭消費貸借契約によつて得た利益を賭博に浪費し、右利益が現存しない場合には、その返還義務を負わない。