準禁治産者が取消の対象である金銭消費貸借契約によつて得た利益を賭博に浪費し、右利益が現存しない場合には、その返還義務を負わない。
準禁治産者が取消の対象である金銭消費貸借契約によつて得た利益を賭博に浪費した場合と返還義務
民法121条但書
判旨
公序良俗に反し無効な金銭消費貸借契約に基づき受け取った金銭が、賭博に浪費されて現存しない場合、不当利得返還義務を負わない。
問題の所在(論点)
公序良俗違反(民法90条)により無効な契約に基づく給付が不法原因給付(同708条)に該当し、かつ受領した金銭が賭博により消費された場合において、受領者に不当利得返還義務(同703条)があるか。特に「利益の存する限度」の判断基準が問題となる。
規範
不法原因給付(民法708条)により給付を受けた者が不当利得返還義務を負う場合であっても、その利得が浪費され、かつ、その浪費が不法な目的に供されたものであるときは、現存利益(民法703条)は認められない。
重要事実
上告人と被上告人との間で金銭消費貸借契約が締結されたが、当該契約は公序良俗に反し無効なものであった。被上告人は本件契約に基づいて金銭を得たが、その金銭はすべて賭博に浪費され、手元には残っていない状態であった。
事件番号: 昭和46(オ)908 / 裁判年月日: 昭和47年12月19日 / 結論: 破棄差戻
根抵当権設定の交渉過程において、当初は債権者が債務者を再興させるために一定の条件が成就したときに行なうべき再建融資のみを被担保債権とすることが予定されていたが、その後右条件成就が未定の間に、債権者が債務者の支払手形を決済させるためのつなぎ融資を行ない、根抵当権設定者において後者を被担保債権に加えることに同意する等判示の…
あてはめ
被上告人が本件契約により得た利益は、賭博という不法な目的に供された結果、完全に消失している。このような浪費による滅失がある場合、社会通念上、利益が受領者の手元に留まっているとはいえず、現に利益を享受しているとは認められない。したがって、返還すべき「現存利益」は存在しないと解される。
結論
被上告人が得た利益は賭博により浪費され現存しないため、被上告人は不当利得の返還義務を負わない。
実務上の射程
不法原因給付の場面で、受益者が利得を賭博などの反社会的な方法で浪費した場合に、返還義務を否定する根拠として活用できる。民法703条の「利益の存する限度」の解釈において、浪費の内容が考慮されることを示す事例である。
事件番号: 平成16(受)1219 / 裁判年月日: 平成18年6月12日 / 結論: 破棄差戻
1 建築会社の担当者が,顧客に対し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず…
事件番号: 昭和39(オ)264 / 裁判年月日: 昭和41年4月22日 / 結論: 棄却
一 民法第一〇九条の代理権授与表示者が、代理行為の相手方の悪意または過失を主張・立証した場合には、同条所定の責任を免れることができる。 二 甲が代理権を乙に授与した旨表示し、乙が、甲の代理人として、丙と甲所有の不動産について根抵当権を設定する旨の契約を締結した場合において、乙が右不動産の権利証、甲の白紙委任状及び印鑑証…
事件番号: 平成7(オ)2025 / 裁判年月日: 平成9年11月11日 / 結論: 棄却
賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては、右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債務者は、右債権の譲受人に対して右債権の発生に係る契約の公序良俗違反による無効を主張してその履行を拒むことができる。