譲渡担保の目的不動産に先順位根抵当権が設定された場合には、特別の事情がない限り、目的不動産の適正な評価額から右根抵当権の極度額を控除した残余価額と当該譲渡担保の被担保債権額とを比較して清算金債務の有無及び数額を確定すべきである。
譲渡担保の目的不動産に先順位根抵当権が設定された場合と清算金債務の確定
民法369条
判旨
譲渡担保の目的不動産に先順位根抵当権が設定されている場合、清算金の有無を判断するにあたり、不動産評価額から根抵当権の極度額を控除した残余価額と被担保債権額を比較すべきである。その結果、債権額が残余価額を上回る場合には、清算金支払義務は発生せず、弁済期の経過により所有権は債権者に確定的に帰属し、債務者は受戻権を行使できなくなる。
問題の所在(論点)
譲渡担保において、目的不動産に先順位の根抵当権が設定されている場合に、清算金の有無や受戻権消滅の成否を判断するための評価方法が問題となる。
規範
譲渡担保における清算金債務の有無及び数額を確定するにあたっては、特別の事情のない限り、目的不動産の適正な評価額から「先順位根抵当権の極度額」を控除したうえで、その残余価額と「当該譲渡担保の被担保債権額」とを比較すべきである。被担保債権額が残余価額と同等、またはこれを上回る場合には、清算金支払義務は生じない。この場合、被担保債権の弁済期到来と同時に目的不動産の所有権は債権者に確定的に帰属し、債務者は債務を弁済して目的不動産の完全な所有権を回復(受戻し)することはできない。
重要事実
上告人(債務者)は、D(債権者)から15万円を借り入れ、その担保として本件土地建物に譲渡担保権を設定した。しかし、譲渡担保の設定以前(または登記前)に、本件不動産には極度額50万円の先順位根抵当権が設定されていた。当時の不動産価格は約50万円であった。上告人は弁済期に支払ができず、猶予された最終弁済期を経過しても債務を完済しなかったため、Dは所有権移転登記を経由した。
事件番号: 昭和49(オ)614 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 棄却
先順位の根抵当権が設定されている不動産を目的とする仮登記担保においては、目的不動産の価額から根抵当権の極度額を控除した残余価額と当該仮登記担保の被担保債権額とを比較して清算金債務の有無及び数額を決すべきである。
あてはめ
本件不動産の評価額は約50万円であるのに対し、控除すべき先順位根抵当権の極度額も50万円である。この場合、評価額から極度額を控除した「残余価額」はゼロ(または極めて低額)となる。これに対し、Dの被担保債権額は15万円(および利息)であり、残余価額を明らかに上回っている。したがって、Dには清算金支払義務が発生しない。特別の事情も認められないため、最終弁済期の経過により、所有権はDに確定的に帰属したといえる。
結論
被担保債権額が控除後の残余価額を超えるため、清算金支払義務は発生せず、債権者は所有権を確定的に取得する。したがって、債務者は受戻権を行使することができない。
実務上の射程
譲渡担保の実行(帰属清算型)における「清算金の不発生」が受戻権を消滅させる理屈を、先順位負担がある場合の評価手法(極度額控除説)とともに示したもの。実務上、清算金の有無は受戻権行使の可否に直結するため、評価額から差し引くべき負担の範囲を画定する際の基準となる。
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
事件番号: 平成9(オ)1771 / 裁判年月日: 平成11年10月21日 / 結論: 棄却
後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。
事件番号: 昭和38(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
不動産所有権を取得したが本登記手続を経ない仮登記権利者は、右不動産上の抵当権者に対し被担保債務が弁済されたことを理由に当該抵当権設定登記の抹消登記手続を請求し得ない。
事件番号: 昭和39(オ)991 / 裁判年月日: 昭和41年6月17日 / 結論: 棄却
抵当権設定登記および同登記より順位の劣後する所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産に対し、旧国税徴収法による滞納処分の例による公売処分がなされた場合には、右仮登記上の権利は消滅するものと解すべきである。