養子縁組の無効の訴えを提起する者は,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえない。
養親の相続財産全部の包括受遺者が提起する養子縁組の無効の訴えと訴えの利益の有無
民法802条,民法964条,民訴法134条,人事訴訟法2条3号
判旨
養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者であっても、養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は、養子縁組無効の訴えにつき法律上の利益を有しない。
問題の所在(論点)
養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は、養子からの遺留分減殺請求を免れるという利害関係がある場合に、養子縁組無効の訴えを提起する法律上の利益を有するか。
規範
養子縁組の無効の訴えは、縁組当事者以外の者も提起できるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要し、単に自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない者は、法律上の利益(人事訴訟法2条2号、3条1項)を有しない。
重要事実
亡養親Bから相続財産全部の包括遺贈を受けた受遺者(被上告人)が、亡養子C(Bの甥)との間の本件養子縁組の無効確認を求めた。被上告人はCから遺留分減殺請求を受けていたが、被上告人とBとの間に親族関係はなく、Cとの間には義兄(2親等の姻族)という関係があるにすぎなかった。二審は、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し遺留分減殺請求を受ける等の法的地位を有することから、訴えの利益を認めたが、上告された。
事件番号: 昭和59(オ)236 / 裁判年月日: 昭和63年3月1日 / 結論: 棄却
第三者の提起する養子縁組無効の訴えは、養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは、訴えの利益を欠く。
あてはめ
遺贈は遺言により財産権を与える意思表示であり、包括受遺者は養子から遺留分減殺請求を受けたとしても、縁組の無効によって影響を受けるのは財産上の権利義務にすぎない。本件被上告人はBと親族関係がなく、Cとの間も2親等の姻族という関係にすぎないため、養子縁組が無効になっても自己の身分関係上の地位に直接の影響を受けるとはいえない。したがって、財産的な利害関係をもって直ちに訴えの利益を認めることはできない。
結論
養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は、直ちに養子縁組無効の訴えにつき法律上の利益を有するとはいえず、本件の訴えは不適法である。
実務上の射程
人事訴訟における原告適格(訴えの利益)が「身分関係に関する地位への直接的影響」に限定されることを確認した判例。相続財産に関する紛争(財産的利益)があるだけでは足りず、相続権そのものや親族関係の変動が自身の身分権に波及する場合に限られる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和37(オ)1235 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。
事件番号: 昭和30(オ)544 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養子縁組の無効原因が存在する場合、利害関係人がその確認を求めることは当然の権利であり、無効原因を知ってから長期間経過後に訴えを提起しても権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、養子縁組に絶対的な無効原因が存在する事案である。上告人は、相手方が無効原因の存在を知ってから長年月が経過した…
事件番号: 平成28(受)1255 / 裁判年月日: 平成29年1月31日 / 結論: 破棄自判
専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
事件番号: 昭和39(オ)189 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
養子縁組の追認には、民法第一一六条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。