第三者の提起する養子縁組無効の訴えは、養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは、訴えの利益を欠く。
第三者の提起する養子縁組無効の訴えと訴えの利益の有無
民法802条,民訴法225条,人事訴訟手続法2条2項,人事訴訟手続法18条1項,人事訴訟手続法24条,人事訴訟手続法26条
判旨
養子縁組無効の訴えの原告適格(法律上の利益)は、当該縁組が無効であることにより、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に限られる。単に財産上の権利義務や特別縁故者としての分与の可能性に影響を受けるにすぎない者は、法律上の利益を有しない。
問題の所在(論点)
縁組当事者以外の第三者が養子縁組無効の訴えを提起する場合、人事訴訟法上の「法律上の利益」が認められるための要件は何か。特に、相続財産分与の可能性といった財産的利害のみを有する者に原告適格が認められるか。
規範
養子縁組無効の訴え(人事訴訟法2条2号)を提起する法律上の利益が認められるためには、当該養子縁組が無効であることにより「自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けること」が必要である。単に自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない者は、当該権利義務に関する限りで縁組の無効を主張すれば足り、対世的に身分関係の存否を確定する訴えを提起するまでの利害関係を有するものではない。
重要事実
上告人は、養親Dの五親等の血族(伯従母)であり、養子Bの四親等の血族(従兄弟)という関係にあった。上告人は、養親Dと養子Bとの間の養子縁組が無効であると主張して、その確認を求めた。上告人は、本件縁組が無効であれば、民法958条の3第1項に基づき特別縁故者として養親の相続財産の分与を受ける可能性があると主張した。
事件番号: 平成30(受)1197 / 裁判年月日: 平成31年3月5日 / 結論: 破棄自判
養子縁組の無効の訴えを提起する者は,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえない。
あてはめ
上告人と養親・養子との関係は四親等または五親等の血族にすぎず、本件縁組の無効によって上告人の「身分関係に関する地位」が直接変化する関係にはない。また、特別縁故者として財産分与を受ける可能性があるとしても、それはあくまで財産上の利益にすぎない。したがって、上告人は本件縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者とはいえない。
結論
上告人は、本件養子縁組無効の訴えにつき法律上の利益を有しないため、原告適格が認められず、訴えは不適法として却下される(本判決では上告棄却)。
実務上の射程
人訴法における身分訴訟の原告適格を限定するリーディングケースである。答案では、単なる相続等の経済的利害と、身分法上の地位(相続権の有無自体や扶養義務の発生等)を峻別する際に用いる。特別縁故者のような期待権的利益では足りないことを論証する際に有用である。
事件番号: 昭和55(オ)1133 / 裁判年月日: 昭和56年4月24日 / 結論: 棄却
甲乙夫婦の乙に縁組意思がない夫婦共同の養子縁組につき、甲が永年乙と同居しながら突如別居して単身で縁組の相手方と同居したため乙の家庭と縁組の相手方との間に紛争を生じ、また、縁組により甲乙間の子らの相続分が減少することが乙の意思に反し、かつ、乙の家庭内の円満を害する可能性を多分に含んでいる等、原判示の事実関係のもとにおいて…
事件番号: 昭和39(オ)189 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
養子縁組の追認には、民法第一一六条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和30(オ)544 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養子縁組の無効原因が存在する場合、利害関係人がその確認を求めることは当然の権利であり、無効原因を知ってから長期間経過後に訴えを提起しても権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、養子縁組に絶対的な無効原因が存在する事案である。上告人は、相手方が無効原因の存在を知ってから長年月が経過した…
事件番号: 昭和37(オ)1235 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。