養子縁組の追認には、民法第一一六条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。
養子縁組の追認と民法第一一六条但書の類推適用の有無。
民法116条,民法797条,旧民法843条
判旨
養子縁組のような身分行為の追認については、民法116条但書の規定は類推適用されない。身分関係は事実関係を重視すべき本質を有しており、取引の安全を目的とする同条但書の適用は、その本質に反するからである。
問題の所在(論点)
養子縁組の追認にあたり、無権代理行為の追認における第三者保護を定めた民法116条但書が類推適用されるか。身分行為の遡及効と第三者の権利関係が問題となる。
規範
身分行為の追認については、民法116条但書は類推適用されない。身分法上の行為は事実関係を重視する本質を有しており、取引の安全という観点からの制限(第三者の権利保護)をこれに持ち込むことは、その本質に反する。したがって、身分行為を追認した場合には、第三者の権利を害するか否かにかかわらず、原則として遡及効が認められる。
重要事実
上告人は、被上告人(B1およびB2)と訴外Dとの間で行われた婚姻および養子縁組に意思の合致がなく無効であると主張した。また、仮に当該養子縁組が追認によって有効となるとしても、民法116条但書を類推適用し、遡及効による第三者(上告人)の権利侵害は許されないと争った。原審は、婚姻および養子縁組の意思を認めるとともに、民法116条但書の類推適用を否定したため、上告人が最高裁へ上告した。
事件番号: 昭和59(オ)236 / 裁判年月日: 昭和63年3月1日 / 結論: 棄却
第三者の提起する養子縁組無効の訴えは、養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは、訴えの利益を欠く。
あてはめ
本件における養子縁組の追認は、身分関係を形成・確定させる行為である。民法116条但書は取引の安全を図るための規定であるが、身分関係においては「真実の身分状態」という事実関係を重視すべき要請が強く、取引上の便宜よりも優先される。したがって、養子縁組の追認により遡及的に身分関係が確定する場合、その遡及効を制限してまで第三者の権利を保護する趣旨を認めることはできない。
結論
養子縁組の追認について民法116条但書は類推適用されない。本件養子縁組の追認は遡及的に有効となり、これを否定する上告人の主張は認められない。
実務上の射程
身分行為(婚姻、養子縁組等)の追認における遡及効の制限に関するリーディングケースである。答案上は、財産法上の規定が身分法に類推適用されるかという文脈で、「身分関係の本質(事実重視)」を理由に否定する論理として活用できる。ただし、身分行為そのものの成否は当事者の意思が重視される点に注意する。
事件番号: 昭和29(オ)356 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
養子縁組届書に届出人の氏名が代書された場合にその事由の記載を欠いても、その届出が受理された以上縁組は有効に成立する。
事件番号: 昭和24(オ)229 / 裁判年月日: 昭和27年10月3日 / 結論: 破棄差戻
一 他人の子を実子として届け出た者の代諾による養子縁組も、養子が満一五年に達した後これを有効に追認することができる。 二 右追認は、明示または黙示の意思表示をもつて養子から養親の双方に対し、養親の一方が死亡した後は他の一方に対してすればたりる。
事件番号: 昭和28(オ)159 / 裁判年月日: 昭和30年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文には具体的な判旨の記載がないが、原審が認定した事実を基礎とした法律判断を正当として上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:上告人が原審の認定した事実および法律判断を不服として上告を申し立てた事案。なお、具体的な権利関係や紛争の内容については判決文からは不明である。 第2 問題の所在(論…