養子縁組届書に届出人氏名代書の事由の記載を欠いていても、その届出が受理された以上、縁組は有効に成立する。
養子縁組届書に届出人氏名代書の事由の記載を欠いた場合と縁組の効力
民法802条
判旨
養親の真意に基づき代書された養子縁組届書による届出は、代書の事由の記載を欠いていても、受理された以上は有効に成立する。
問題の所在(論点)
養子縁組届書に届出人の氏名が代書され、かつ代書の事由に関する記載が欠けている場合、その届出による養子縁組は有効に成立するか。
規範
養子縁組の成立要件(民法799条・739条)において、届出人が自ら署名せず他人に氏名を代書させた場合であっても、届出が届出人の真意に基づき、かつ受理された以上は、代書事由の記載といった形式的不備があったとしても、縁組の効力は妨げられない。
重要事実
養親となることを希望していた亡Dは、発病前から被上告人を養子にする意向を持ち、代諾者である父母の承諾も得ていた。Dは届出当時、養子縁組を行うに十分な意思能力および意思伝達能力を有しており、本件養子縁組届書はDの真意に基づき代書されたものであった。しかし、当該届書には代書に至った事由の記載が欠けていたが、戸籍吏員によって受理された。
事件番号: 昭和29(オ)356 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
養子縁組届書に届出人の氏名が代書された場合にその事由の記載を欠いても、その届出が受理された以上縁組は有効に成立する。
あてはめ
まず、亡Dには発病前から養子縁組の確定的な意欲があり、届出時にも意思能力が認められることから、縁組の合意(真意)が存在する。次に、届書はDの真意に基づき作成されており、届出の意思に欠けるところはない。代書の事由が記載されていない点は届出の形式的不備にすぎず、既に受理されている以上、身分関係の安定という観点からも、この不備を理由に縁組を無効とすべきではない。
結論
本件養子縁組は有効に成立する。代書の事由の記載を欠く届出であっても、受理された以上は効力を有する。
実務上の射程
届出を要する身分行為(婚姻、養子縁組等)において、届書の形式的不備と届出の真意の関係を論じる際の基準となる。実務上は、受理後の無効主張を制限する判例として機能し、意思能力の有無と代書の真実性が主要な争点となる。
事件番号: 昭和37(オ)1235 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。
事件番号: 昭和45(オ)266 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
当事者間において養子縁組の合意が成立しており、かつ、その当事者から他人に対し右縁組の届出の委託がなされていたときは、届出が受理された当時当事者が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届出の受理により養子縁組は有効に成立する。
事件番号: 昭和32(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和33年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養子縁組届が当事者の一方の不知の間にその意思に基づかずになされた場合、当該養子縁組をする意思がないものとして、その縁組は無効である。 第1 事案の概要:被上告人との間で養子縁組届(甲12号証)が提出されていたが、実際には被上告人には本件養子縁組をする意思が全くなかった。この養子縁組届は、被上告人が…
事件番号: 昭和23(オ)85 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないと…