他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。
他の相続人の相続分を排することを主たる目的とする養子縁組の効力。
民法802条
判旨
養子縁組における縁組意思は、真に養親子関係を成立させる意思があれば足り、節税や相続分の調整といった動機が併存していても、直ちに無効とはならない。
問題の所在(論点)
特定の推定相続人の相続分を減少させ、他の者に相続させるという動機・目的でなされた養子縁組について、民法802条1号の「縁組意思」が認められるか、また公序良俗に反し無効となるか。
規範
民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、真に養親子関係を成立させる意思がない場合を指す。当事者間に親子としての精神的なつながりをつくる意思(真実養親子関係を成立せしめる意思)が認められるのであれば、たとえ特定の者に相続分を取得させる等の意図が併存していたとしても、それは縁組の動機(縁由)にすぎず、縁組意思を欠くものとはいえない。
重要事実
養親Dは、孫である被上告人らとの間で養子縁組を行った。その主な目的は、Dの遺産に対する上告人の相続分を排除し、孫らにこれを取得させることにあった。上告人は、このような相続分調整の意図に基づく縁組は真実の親子関係を創設する意思を欠き、民法802条1号により無効、あるいは民法90条(公序良俗)に反し無効であると主張した。
事件番号: 平成28(受)1255 / 裁判年月日: 平成29年1月31日 / 結論: 破棄自判
専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
あてはめ
本件において、養親Dと被上告人らとの間には親子としての精神的なつながりをつくる意思が認められる。相続分を調整して孫に遺産を取得させようとする意図があったとしても、それは縁組に至る動機にすぎない。真実の養親子関係を成立させる意思が十分にあったと認められる以上、縁組意思を欠くとはいえない。また、かかる動機に基づく縁組が直ちに公序良俗に反するとも解されない。
結論
本件養子縁組は有効である。相続分調整の意図があっても、真に養親子関係を成立させる意思がある限り、縁組意思は否定されない。
実務上の射程
節税や相続対策を目的とした養子縁組の有効性が争われる事案におけるリーディングケースである。実務上は、主観的な「精神的つながりをつくる意思」の有無が重要であり、単に書類上の形式を整えるだけの脱法目的でない限り、広く有効性を認める傾向にある。
事件番号: 昭和23(オ)85 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないと…
事件番号: 昭和45(オ)975 / 裁判年月日: 昭和46年10月22日 / 結論: 棄却
養子縁組の当事者である甲男と乙女との間に、たまたま過去に情交関係があつたが、事実上の夫婦然たる生活関係が形成されるには至らなかつた場合において、乙は、甲の姪で、永年甲方に同居してその家事や家業を手伝い、家計をもとりしきつていた者であり、甲は、すでに高令に達し、病を得て家業もやめたのち、乙の世話になつたことへの謝意をもこ…
事件番号: 昭和32(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和33年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養子縁組届が当事者の一方の不知の間にその意思に基づかずになされた場合、当該養子縁組をする意思がないものとして、その縁組は無効である。 第1 事案の概要:被上告人との間で養子縁組届(甲12号証)が提出されていたが、実際には被上告人には本件養子縁組をする意思が全くなかった。この養子縁組届は、被上告人が…