判旨
養子縁組届が当事者の一方の不知の間にその意思に基づかずになされた場合、当該養子縁組をする意思がないものとして、その縁組は無効である。
問題の所在(論点)
当事者の一方が不知の間に、その意思に基づかずになされた養子縁組届による養子縁組の効力(民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に該当するか)。
規範
養子縁組が有効に成立するためには、当事者間に真に養子縁組を成立させる合意(縁組意思)があることを要する。したがって、届出書が作成・提出されたとしても、当事者の一方にその意思がない場合には、当該養子縁組は無効となる。
重要事実
被上告人との間で養子縁組届(甲12号証)が提出されていたが、実際には被上告人には本件養子縁組をする意思が全くなかった。この養子縁組届は、被上告人が知らない間に、その意思に基づかずに作成・提出されたものであった。
あてはめ
本件において、被上告人には養子縁組をする主観的な意思が存在しなかったことが事実として確定している。また、客観的な届出行為についても、被上告人の不知の間に、本人の意思に関与せずに行われたものである。このように、当事者の一方の意思が完全に欠如した状態でなされた届出は、縁組の成立要件である「当事者間の合意」を欠くものといえる。
結論
本件養子縁組は無効である。
実務上の射程
婚姻や養子縁組といった身分行為において、届出という形式が整っていても実質的な意思(創設的意思)を欠く場合は無効となるという原則を示す。答案上は、民法802条1号(養子の無効)の意義として、届出の有無にかかわらず「真に親子関係を創設する意思」の欠如が決定的な無効事由になることを論述する際に用いる。
事件番号: 昭和23(オ)85 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないと…
事件番号: 昭和37(オ)1235 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。
事件番号: 昭和45(オ)975 / 裁判年月日: 昭和46年10月22日 / 結論: 棄却
養子縁組の当事者である甲男と乙女との間に、たまたま過去に情交関係があつたが、事実上の夫婦然たる生活関係が形成されるには至らなかつた場合において、乙は、甲の姪で、永年甲方に同居してその家事や家業を手伝い、家計をもとりしきつていた者であり、甲は、すでに高令に達し、病を得て家業もやめたのち、乙の世話になつたことへの謝意をもこ…
事件番号: 昭和45(オ)266 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
当事者間において養子縁組の合意が成立しており、かつ、その当事者から他人に対し右縁組の届出の委託がなされていたときは、届出が受理された当時当事者が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届出の受理により養子縁組は有効に成立する。