当事者間において養子縁組の合意が成立しており、かつ、その当事者から他人に対し右縁組の届出の委託がなされていたときは、届出が受理された当時当事者が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届出の受理により養子縁組は有効に成立する。
養子縁組の届出が受理された当時当事者が意識を失つていた場合と養子縁組の届出の効力
民法799条,民法739条,民法802条
判旨
当事者間に養子縁組の合意があり、届出の委託がなされていた場合、届出の受理時に当事者が意識を失っていたとしても、翻意などの特段の事情がない限り、当該届出の受理により養子縁組は有効に成立する。
問題の所在(論点)
養子縁組の届出が受理された時点で、当事者の一方が意識を喪失していた場合、民法799条・739条にいう「届出」として有効といえるか。届出時における意思能力の要否が問題となる。
規範
民法799条・739条1項に基づく届出の有効性について、(1)当事者間に養子縁組を成立させる真実の合意が存在し、(2)当事者から第三者に対し届出の委託がなされていた場合には、(3)たとえ届出受理時に当事者が意識を喪失していたとしても、(4)届出の受理前に翻意したなどの特段の事情がない限り、右届出により養子縁組は有効に成立する。
重要事実
訴外亡Dは、被上告人両名との間で養子縁組をする合意をし、第三者Eに対してその届出を委託した。しかし、Eがその委託に基づき市長に届出をした昭和43年3月18日16時頃、Dは既に意識を失っていた(あるいは意識不明の状態に近い状況であったことが示唆される)。なお、届出が受理されるまでの間に、Dが縁組の意思を翻意した事実は認められなかった。
あてはめ
本件では、Dと被上告人らとの間に真実縁組の合意が成立しており、DによるEへの届出委託も適法になされている。また、委託から受理までの間にDが縁組を翻意したという特段の事情は認められない。そうであれば、届出受理時にDが意識を失っていたとしても、既に形成されていた縁組意思に基づく届出としての有効性を妨げるものではない。したがって、受理により縁組の効力が発生したと解するのが相当である。
結論
本件養子縁組の届出はDの意思に基づくものとして有効であり、養子縁組は適法に成立する。
実務上の射程
婚姻(739条)や養子縁組などの届出を効力発生要件とする身分行為全般に射程が及ぶ。本判決は、受理時点での現実の意思能力を厳格に要求した大審院判例を変更し、合意と委託、そして「翻意の不在」という客観的事実から届出の有効性を認める実務的な基準を示したものである。
事件番号: 昭和36(オ)863 / 裁判年月日: 昭和37年1月18日 / 結論: 棄却
養子縁組届書に届出人氏名代書の事由の記載を欠いていても、その届出が受理された以上、縁組は有効に成立する。
事件番号: 昭和45(オ)975 / 裁判年月日: 昭和46年10月22日 / 結論: 棄却
養子縁組の当事者である甲男と乙女との間に、たまたま過去に情交関係があつたが、事実上の夫婦然たる生活関係が形成されるには至らなかつた場合において、乙は、甲の姪で、永年甲方に同居してその家事や家業を手伝い、家計をもとりしきつていた者であり、甲は、すでに高令に達し、病を得て家業もやめたのち、乙の世話になつたことへの謝意をもこ…
事件番号: 昭和32(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和33年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養子縁組届が当事者の一方の不知の間にその意思に基づかずになされた場合、当該養子縁組をする意思がないものとして、その縁組は無効である。 第1 事案の概要:被上告人との間で養子縁組届(甲12号証)が提出されていたが、実際には被上告人には本件養子縁組をする意思が全くなかった。この養子縁組届は、被上告人が…