一 他人の子を実子として届け出た者の代諾による養子縁組も、養子が満一五年に達した後これを有効に追認することができる。 二 右追認は、明示または黙示の意思表示をもつて養子から養親の双方に対し、養親の一方が死亡した後は他の一方に対してすればたりる。
他人の子を実子として届け出た者の代諾による養子縁組の追認の許否
旧民法843条,民法797条
判旨
15歳未満の者の養子縁組につき無権限者が代諾した場合であっても、養子が15歳に達した後は、無権代理の追認の規定を類推適用して当該縁組を追認できる。この追認は明示・黙示を問わず、適法になされたときは縁組は遡及的に有効となる。
問題の所在(論点)
無権限者が15歳未満の者に代わって行った養子縁組の代諾について、養子が15歳に達した後にこれを追認し、無効な縁組を有効にすることができるか。
規範
15歳未満の者の養子縁組における代諾は法定代理に基づくものであり、代理権の欠缺がある場合は一種の無権代理にあたる。したがって、民法総則の無権代理の追認に関する規定及び親族法上の養子縁組の追認に関する規定の趣旨を類推適用すべきである。養子は15歳に達した後、父母でない者が自己に代わってした代諾による養子縁組を有効に追認できる。この追認は要式を要さず、明示または黙示により、養親(一方が死亡している場合は他方)に対してなされれば足りる。追認がなされたときは、縁組は当初から有効となる。
重要事実
上告人A1は、戸籍上の父母D・Eの二男として登載され、3歳の時にD夫婦が代諾者としてA2夫婦との養子縁組を届け出た。しかし、実際にはA1はD夫婦の子ではなくGの子であったため、D夫婦には旧民法843条に基づく代諾権がなかった。A1は15歳に達した後も、長年にわたりA2夫婦と実の親族同様に生活を共にし、婚姻の際もA2の同意を得るなど事実上の親子関係を継続した。さらに昭和22年には書面で追認の意思表示を行った。原審は、養子縁組は要式行為であるとして追認の余地を否定した。
事件番号: 昭和39(オ)189 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
養子縁組の追認には、民法第一一六条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。
あてはめ
養子縁組が要式行為であっても、民法が取消しうる縁組の追認を認めていることから、追認が縁組と本質的に相容れないものではない。本件では、A1が15歳に達した後も約20年間にわたりA2夫婦との間で実の親子同様の情愛をもって生活し、A2もA1を相続人と公言するなど、事実上の養親子関係が既成している。このような事実関係があるならば、黙示の追認があったと解する余地があり、さらに昭和22年の書面による意思表示は明示の追認に該当しうる。これらを検討せずに追認の法理を排斥した原審の判断は法令解釈の誤りがあるといえる。
結論
養子が15歳に達した後は、無権限者による代諾縁組を追認でき、追認により縁組は遡及的に有効となる。原判決を破棄し、追認の存否を審理させるため差戻す。
実務上の射程
身分行為における無権代理的構成と追認を認めた重要な判例である。答案上は、代諾権のない者(実親でない者等)がなした縁組の効力が争点となる場合に、表見代理の成否と併せて、15歳到達後の追認による遡及的有効化を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和29(オ)356 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
養子縁組届書に届出人の氏名が代書された場合にその事由の記載を欠いても、その届出が受理された以上縁組は有効に成立する。
事件番号: 昭和30(オ)544 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養子縁組の無効原因が存在する場合、利害関係人がその確認を求めることは当然の権利であり、無効原因を知ってから長期間経過後に訴えを提起しても権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、養子縁組に絶対的な無効原因が存在する事案である。上告人は、相手方が無効原因の存在を知ってから長年月が経過した…
事件番号: 昭和45(オ)266 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
当事者間において養子縁組の合意が成立しており、かつ、その当事者から他人に対し右縁組の届出の委託がなされていたときは、届出が受理された当時当事者が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届出の受理により養子縁組は有効に成立する。