夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,当該第三者が,単に不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。
夫婦の一方が他方と不貞行為に及んだ第三者に対し離婚に伴う慰謝料を請求することの可否
民法709条,民法710条
判旨
不貞相手の第三者が、離婚をさせたこと自体を理由とする不法行為責任を負うのは、単なる不貞行為にとどまらず、夫婦を離婚させる意図で婚姻関係に不当な干渉をするなどの特段の事情がある場合に限られる。
問題の所在(論点)
夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者が、他方の配偶者に対し、離婚させたことを理由とする不法行為責任(離婚慰謝料支払義務)を当然に負うか。民法709条における責任発生の要件が問題となる。
規範
夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、不貞行為を理由とする責任(不貞慰謝料)を負う場合があることは別として、直ちに離婚させたこと自体の責任(離婚慰謝料)を負うものではない。第三者が離婚慰謝料責任を負うのは、単に不貞行為に及ぶだけでなく、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなど、当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき「特段の事情」があるときに限られる。
重要事実
被上告人(夫)と妻Aは平成6年に婚姻した。上告人(第三者)は平成21年6月以降、Aと不貞関係に及んだ。平成22年5月、被上告人が不貞を知った際、Aは上告人との関係を解消し、被上告人との同居を続けた。しかし、平成26年4月にAは別居を開始し、平成27年2月に調停離婚が成立した。被上告人は上告人に対し、離婚に伴う精神的苦痛の賠償(離婚慰謝料)を求めて提訴した。
あてはめ
上告人はAと不貞行為に及んだが、不貞発覚時にその関係は解消されている。また、離婚成立は不貞発覚から約5年後であり、その間に上告人が夫婦を離婚させる意図をもって婚姻関係に不当な干渉をした形跡は認められない。したがって、上告人がAと不貞行為に及んだ事実はあっても、被上告人とAを離婚のやむなきに至らしめたと評価すべき「特段の事情」があるとはいえない。
結論
上告人は、離婚に伴う慰謝料について不法行為責任を負わない。特段の事情がない限り、離婚慰謝料の請求は認められない。
実務上の射程
不貞慰謝料(不貞行為そのものによる苦痛)と離婚慰謝料(離婚という結果による苦痛)を明確に区別し、第三者に対する後者の請求を厳格に制限した。答案上は、不貞慰謝料の消滅時効が完成している局面などで離婚慰謝料を構成して請求する場合の反論として極めて重要である。
事件番号: 昭和34(オ)126 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
第二審判決理由を是認した判決。