婚姻外の男女の関係が継続していた期間中,両者は,その住居を異にしており,共同生活をしたことは全くなく,それぞれが自己の生計を維持管理しており,共有する財産もなかったこと,女性は,男性との間に2人の子を出産したが,子の養育の負担を免れたいとの女性の要望に基づく両者の事前の取決め等に従い,2人の子の養育には一切かかわりを持たず,また,出産の際には,男性側から出産費用等として相当額の金員をその都度受領していること,両者の間に民法所定の婚姻をする旨の意思の合致が存したことはなく,かえって,両者は意図的に婚姻を回避していること,両者の間において,その一方が相手方に無断で相手方以外の者と婚姻をするなどしてその関係から離脱してはならない旨の関係存続に関する合意がされた形跡はないことなど判示の事情の下においては,男性が,両者の関係を突然かつ一方的に解消し,他の女性と婚姻したことをもって,慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することはできない。
婚姻外の男女の関係を一方的に解消したことにつき不法行為責任が否定された事例
民法709条,民法710条 ,民法第4編第2章第1節 婚姻の成立
判旨
法律婚や内縁に当たらない男女間の継続的関係(パートナーシップ関係)の解消が、直ちに不法行為を構成することはない。共同生活の実態がなく、関係存続の合意も認められない場合、一方が突然かつ一方的に関係を解消しても、相手方の法的権利を侵害するものとはいえない。
問題の所在(論点)
婚姻または内縁関係にない男女間の継続的関係(いわゆるパートナーシップ関係)を一方的に解消する行為が、不法行為(民法709条)を構成するか。
規範
婚姻届を提出せず、共同生活(同居・扶助・生計の同一)の実態を欠き、意図的に婚姻を回避している男女間の関係は、内縁関係にも準ぜず、法的な拘束性を伴わない。このような関係において一方が関係を離脱しない旨の特段の合意がない限り、一方が一方的に関係を解消したとしても、公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、不法行為(民法709条)上の違法性は認められない。
事件番号: 昭和41(オ)819 / 裁判年月日: 昭和41年12月8日 / 結論: 棄却
内縁を不当に破棄された者は相手方に対し不法行為を理由として損害賠償を求めることもできる。
重要事実
上告人と被上告人は約16年間、親交を深める「特別の他人」として交際し、2児を設けた。しかし、①住居は別で同居せず生計も別であり、共有財産もなかった。②子供の養育は上告人が全責任を負い、被上告人は関与しなかった。③出生の際、法律上の不利益を避けるために婚姻と離婚の届出を繰り返したが、実質的な婚姻意思はなく意図的に法律婚を回避していた。④関係存続に関する合意もなかった。上告人は、他の女性と結婚する旨の手紙を渡し、一方的に関係を解消した。
あてはめ
本件の両者の関係は、16年間の長きにわたり子供もいるが、実態としては住居・生計を異にしており、共同生活を欠く。また、意図的に法律婚を回避しており、婚姻に準ずる存続の保障を認める余地はない。さらに関係を維持すべき法的な義務を負う合意も存在しない。したがって、被上告人に関係継続への期待があったとしても、それは法的に保護された利益とはいえず、突然の関係解消であっても違法性は認められない。
結論
上告人が一方的に関係を解消し他者と婚姻した行為は、慰謝料請求権を発生させる不法行為には当たらない。
実務上の射程
内縁(準婚)関係の成立要件(主観的な婚姻意思と客観的な共同生活の実態)を欠く「自由な交際関係」については、その解消による損害賠償責任を否定する射程を持つ。答案上は、内縁関係の成否を論じた上で、否定される場合の予備的主張(期待権侵害等)に対する反論として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1002 / 裁判年月日: 昭和37年10月23日 / 結論: 棄却
内縁解消の申入れをして不当に内縁を破棄した者の責任は、相手方が該申入に応じたことによつて消長を来さない。