1 普通地方公共団体の議会の議員に対する懲罰その他の措置が当該議員の私法上の権利利益を侵害することを理由とする国家賠償請求の当否を判断するに当たっては,当該措置が議会の内部規律の問題にとどまる限り,議会の自律的な判断を尊重し,これを前提として請求の当否を判断すべきである。 2 市議会の議会運営委員会による議員に対する厳重注意処分の決定は,議員としての行為に対する市議会の措置であり,市議会の定めた政治倫理要綱に基づくものであって特段の法的効力を有するものではないという事情の下においては,その適否については議会の自律的な判断を尊重すべきであり,当該決定が違法な公権力の行使に当たるとはいえない。
1 普通地方公共団体の議会の議員に対する懲罰その他の措置が当該議員の私法上の権利利益を侵害することを理由とする国家賠償請求の当否の判断方法 2 市議会の議会運営委員会による議員に対する厳重注意処分の決定が違法な公権力の行使に当たるとはいえないとされた事例
(1,2につき)国家賠償法1条1項,裁判所法3条1項
判旨
普通地方公共団体の議会の議員に対する措置が、議会の内部規律の問題にとどまる限り、議会の自律的な判断を尊重すべきであり、当該措置を理由とする国家賠償請求における違法性の判断においても、その自律的な判断を前提として請求の当否を判断すべきである。
問題の所在(論点)
地方議会による議員への厳重注意処分及びその公表が、国家賠償法1条1項の適用上、違法と評価されるか。議会の自律的判断権と司法審査の関係が問題となる。
規範
1. 地方議会議員に対する懲罰等の措置が私法上の権利利益を侵害することを理由とする国家賠償請求は、法律上の争訟(裁判所法3条1項)に当たり適法である。 2. もっとも、議会は自律的な法規範を有するものであり、その議員に対する措置が議会の内部規律の問題にとどまる限り、議会の自律的な判断を尊重すべきである。 3. したがって、当該措置が国家賠償法1条1項の適用上違法か否かの判断にあたっては、議会の自律的な判断を尊重し、これを前提として請求の当否を判断すべきである。
重要事実
1. 市議会議員であるX(被上告人)は、公費節減等の政治的信条に基づき、議長が承認し出張命令を発した視察旅行を欠席した。 2. 議会運営委員会は、正当な理由のない欠席が政治倫理要綱等に反するとして、Xに対し厳重注意処分(本件措置)を決定した。 3. 市議会議長は、記者数名が同席する議長室にて本件措置の通知書を朗読・交付した(本件公表)。 4. Xは、本件措置等により社会的評価を低下させられたとして、国家賠償請求を提起した。
あてはめ
1. 本件措置は、議員としての行為に対する措置であり、かつ政治倫理要綱に基づくものであって、特段の法的効力を有するものではない。 2. また、公表の態様についても、記者への朗読・交付という方法は、殊更に社会的評価を低下させるような不当な態様、方法とはいえない。 3. 以上によれば、本件措置等は「議会の内部規律の問題にとどまるもの」といえる。したがって、その適否については議会の自律的な判断を尊重すべきである。
結論
本件措置等は議会の内部規律の問題にとどまり、議会の自律的判断が尊重されるべきであるから、国家賠償法1条1項の適用上、違法な公権力の行使に当たるとはいえない。上告人の責任を否定した一審判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、部分社会の法理(自律的法規範)が、実体法上の責任(国家賠償法上の違法性判断)においてどのように作用するかを明示した。訴え自体は「法律上の争訟」として適法としつつ、内容の当否については議会の裁量を広く認めることで、司法の抑制的姿勢を維持している。
事件番号: 平成11(行ヒ)114 / 裁判年月日: 平成16年3月2日 / 結論: 破棄自判
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