市が,姉妹都市の提携をしている外国の都市との人的,物的交流の緊密化,市の経済の発展等を目的として,同都市との間に高速船を運航する事業を行うことを提唱し,協力要請に応じた民間企業等と共に出資して当該事業を行うことを目的とする株式会社を設立し,その運営や資金調達等に関して積極的な役割を果たし,当該会社の借入金債務合計3億8000万円を連帯保証した上記民間企業等に対して市が責任を持って対処するので迷惑を掛けない旨の説明をしていた場合において,当該会社が業績不振により高速船の運航を休止し支払不能の状態に至った後,市が地方自治法232条の2に定める公益上の必要があるとして当該会社に対し上記借入金相当額の補助金を支出したことについて,それが上記民間企業等に連帯保証債務の履行をさせ上記の説明に反して当該事業の清算に伴う損失を負担させる結果となることを避け,当該事業を主導した市に対する協力と信頼にこたえる趣旨でされたこと,市議会において特にその支出の当否が審議された上で予算が可決されたことなど判示の事情の下においては,上記補助金の支出に係る市長の判断に裁量権の逸脱,濫用の違法があるとはいえない。 (反対意見がある。)
市が主導して外国都市との間の高速船の運航事業を目的として設立した第3セクターに対しその経営破たん後に地方自治法232条の2に定める公益上の必要があるとして補助金を支出したことについて市長の判断に裁量権の逸脱,濫用の違法があるとはいえないとされた事例
地方自治法232条の2,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
判旨
地方公共団体が補助金を支出する際の「公益上の必要性」の判断は、原則として長の合理的な裁量に委ねられ、その判断が不合理で裁量権の逸脱・濫用にあたらない限り違法とはならない。第三セクターの清算にあたり、市が協力企業等の連帯保証債務を肩代わりするために補助金を支出することは、事業の経緯や信頼関係維持の観点から裁量権の範囲内と認められる。
問題の所在(論点)
地方自治法232条の2の「公益上の必要性」の有無に関する長の判断が、司法審査においてどの程度尊重されるべきか、また本件のような協力企業に対する損失補填的補助金が裁量権の範囲内といえるかが問題となる。
規範
地方自治法232条の2にいう「公益上必要がある場合」の判断は、普通地方公共団体の長の合理的な裁量に委ねられる。当該支出が、事業の目的、地方公共団体と事業との関わりの程度、支出に至る経緯、支出の趣旨、地方公共団体の財政状況等の諸事情に照らし、不合理で裁量権の範囲を逸脱・濫用したと認められない限り、違法とはならない。
重要事実
下関市は、第三セクターである本件会社を設立して高速船事業を主導したが、経営悪化により運航停止に追い込まれた。清算にあたり、市側は協力企業(本件6社等)に対し、本件借入金の連帯保証を引き受けるよう依頼する際、「市が責任を持って対処し迷惑をかけない」と約束していた。市長(上告人)は、市の説明に反して民間協力者に損失を負担させることは市への信頼を裏切ることになると考え、債務弁済資金として補助金(計3億8000万円)を支出する予算案を提出し、市議会で可決された。住民(被上告人ら)は、当該補助金支出は公益上の必要性を欠き違法であるとして損害賠償を求めた。
あてはめ
本件事業は市が主導し、協力企業は市の「責任を持つ」との説明を信頼して保証を引き受けた経緯がある。本件補助金の趣旨は、この信頼に応え、市政に対する社会的信頼を維持することにある。また、市の財政状況(財政調整基金301億円超)に照らして過大な負担とはいえず、市議会においても審議の上で可決されている。支出が関係者に不正な利益をもたらすものでもない以上、保証人の資力を考慮せず肩代わりしたとしても、直ちに不合理な判断とはいえない。したがって、裁量権の逸脱・濫用は認められない。
結論
本件各補助金の支出は、地方自治法232条の2に違反せず適法である。市長に損害賠償責任は生じない。
実務上の射程
地方公共団体による補助金支出の違法性が争われる事案におけるリーディングケース。長の広範な裁量を認める一方で、判断要素(事業目的、関与度、経緯、財政、議会の関与等)を具体的に示しており、答案上もこれらの要素を事実から拾い上げてあてはめる必要がある。特に「市政への信頼維持」が公益に含まれる点に留意が必要。
事件番号: 平成18(行ヒ)79 / 裁判年月日: 平成22年2月23日 / 結論: 破棄差戻
市営と畜場の廃止に当たり市が利用業者等に対してした支援金の支出は,当該と畜場の利用資格に制限がなく,利用業者等と市との間に委託契約等の継続的契約関係はない上,当該と畜場は関係法令の改正等に伴い必要となる施設の新築が実現困難であるためにやむなく廃止されたという事実関係の下においては,利用業者等が当該と畜場を事実上独占的に…