市営と畜場の廃止に当たり市が利用業者等に対してした支援金の支出は,当該と畜場の利用資格に制限がなく,利用業者等と市との間に委託契約等の継続的契約関係はない上,当該と畜場は関係法令の改正等に伴い必要となる施設の新築が実現困難であるためにやむなく廃止されたという事実関係の下においては,利用業者等が当該と畜場を事実上独占的に使用する状況が継続していたとしても,国有財産法19条,24条2項の類推適用又は憲法29条3項に基づく損失補償金の支出として適法なものであるとはいえない。
市営と畜場の廃止に当たり市が利用業者等に対してした支援金の支出が,国有財産法19条,24条2項の類推適用又は憲法29条3項に基づく損失補償金の支出として適法なものであるとはいえないとされた事例
憲法29条3項,国有財産法19条,国有財産法24条2項
判旨
行政財産の事実上の独占的利用による利益は反射的利益にすぎず、施設の老朽化や法令改正に伴う廃止による不利益は特別の犠牲に当たらないため、損失補償としての公金支出は違法である。また、これを補助金として正当化するには、予算名目と実態の乖離が議会による予算統制を潜脱しないか、適正な手続を履践しているかを慎重に判断すべきである。
問題の所在(論点)
1. 行政財産の廃止に伴い、事実上の利用継続を期待していた業者らに対する公金支出が、憲法29条3項等の損失補償として適法か。 2. 損失補償として成立しない支出を、実質的に地方自治法上の補助金として正当化できるか。
規範
1. 損失補償(憲法29条3項等):特定の者が享受してきた利益が、公共の用に供されたことによる反射的利益にとどまり、かつ、行政施設の廃止がやむを得ない事情に基づく場合、その不利益は住民が等しく受忍すべきものであり、「特別の犠牲」には当たらない。 2. 補助金支出(地方自治法232条の2):補助金としての性格を有する公金支出が適法であるためには、公益上の必要性に加え、予算統制の潜脱(予算科目と実態の乖離)がないこと、および支出方法の妥当性(内部規定の遵守等)が認められなければならない。
重要事実
八代市は、約1世紀にわたり同和対策事業等として運営してきた市営と畜場を、法令改正に伴う施設新築の困難を理由に廃止した。市は、継続的契約関係にない利用業者らに対し、営業継続のための施設整備費や所得補償等の名目で総額約3億円の「支援金」を支出した。この予算は「補償、補填及び賠償金」の節に計上され、市議会で可決されたが、補助金交付手続(市費補助等取扱要綱)は経ておらず、事後の使途確認も予定されていなかった。
あてはめ
1. 本件利用業者は市と継続的契約関係になく、事実上の独占的使用による利益は「反射的利益」にすぎない。また、と畜場法改正への対応困難というやむを得ない理由による廃止は、住民が等しく受忍すべき範囲内であり、「特別の犠牲」は認められない。したがって、損失補償としての支出は違法である。 2. 補助金としてみる場合、予算名目が「補償」とされており、本来の補助金手続を回避して一括支給する手法は、議会による予算統制を潜脱するおそれがある。原審は公益上の必要性のみを重視し、適正な予算執行の手続的側面を十分に審理していない。
結論
本件支援金の支出は損失補償としては違法であり、補助金としての適法性については、予算統制の潜脱や手続の妥当性をさらに審理する必要があるとして、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
住民訴訟における公金支出の違法性評価において、実質的な必要性(公益性)だけでなく、予算科目の正確性や内部手続の遵守といった「予算統制の民主的統制」を重視する。損失補償の「特別の犠牲」の判断にあたって、行政財産の利用が反射的利益か法的権利かを厳格に区別する指針となる。
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