県が,県議会議員の職にあった者の功労に報いるとともにその者らに引き続き県政の発展に寄与してもらう趣旨で,その者らのうち会則の趣旨に賛同する者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために補助金を交付した場合において,同補助金の対象となった事業がいずれも同会の会員を対象とした内部的な行事等であってその事業自体に公益性を認めることができないこと,同補助金の額が同会の事業の内容や会員数に照らし県議会議員の職にあった者に対する礼遇として社会通念上是認し得る限度を超えていることなど判示の事情の下においては,同補助金の支出は,地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する県の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法である。
県が県議会議員の職にあった者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために行った補助金の支出が地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する県の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であるとされた事例
地方自治法232条の2,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
判旨
地方公共団体が元議会議員の親睦団体に対して行う補助金支出は、元議員の礼遇として社会通念上是認し得る限度を超える場合には、地方自治法上の「公益上の必要性」を欠き、裁量権を逸脱・濫用するものとして違法となる。
問題の所在(論点)
元議員による親睦団体への補助金支出が、地方自治法232条の2にいう「公益上必要がある場合」として、知事等の裁量の範囲内といえるか(支出の適法性)。
規範
普通地方公共団体は、その事務を処理するため必要があるときは、寄附又は補助をすることができる(地方自治法232条の2)。この「公益上必要がある場合」の判断は、地方公共団体の広範な裁量に委ねられるが、支出の目的・態様・金額等に照らし、社会通念上是認し得る限度を超える場合には、裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法となる。特に元議員への礼遇を目的とする場合、退職後は県民を代表する立場にないことから、その限度は厳格に判断される。
事件番号: 平成17(行ヒ)304 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結する場合であっても,次の(1)又は(2)のときには,当該売買契約の締結は違法となる。 (1) 上記委託契約を締結した普通地方公共団体の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱…
重要事実
静岡県は、元県議会議員らで構成される権利能力なき社団(被上告人元議員会)に対し、平成11年度に450万円、12年度に約241万円の補助金を支出した。当該団体は「会員の親睦」や「県政への寄与」を目的としていたが、実際の活動内容はホテルでの総会・懇親会、1人5万5000円の参加費を要する北海道視察、1泊2日の県内視察、講演会等であった。住民らは、この支出は公益性を欠き違法であるとして、当時の知事らに対し損害賠償等を求めた。
あてはめ
まず、補助対象事業は会員を対象とした内部的な行事等(総会、視察、講演会等)にすぎず、住民の福祉に直接役立つものではないため、事業自体の公益性は認めがたい。次に、本件支出の趣旨が元議員の「礼遇」にあるとしても、元議員は退職後、県民を代表する立場にない。本件支出額(年間数百万円規模)は、団体の事業内容や会員数(約100名)に照らせば、礼遇として社会通念上是認し得る限度を明らかに超えている。したがって、公益上の必要性を認めた県の判断には、合理的な根拠が欠如しているといえる。
結論
本件各補助金の交付につき「公益上必要がある」とした県の判断は、裁量権の範囲を逸脱したものであり、本件支出は全体として違法である。
実務上の射程
住民訴訟において補助金支出の適法性を争う際、「公益上の必要性」に関する裁量統制の基準として活用する。特に、対象団体が公的な役割を終えた特定の属性を持つ者の団体(元職員、元議員等のOB会)である場合、社会通念上の受容限度を厳しく解する論理として機能する。
事件番号: 平成29(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成30年11月6日 / 結論: 破棄自判
1 普通地方公共団体の財産の譲渡又は貸付けが適正な対価によるものであるとして議会に提出された議案を可決する議決がされた場合であっても,当該譲渡等の対価に加えてそれが適正であるか否かを判定するために参照すべき価格が提示され,両者の間に大きなかい離があることを踏まえつつ当該譲渡等を行う必要性と妥当性について審議がされた上で…
事件番号: 平成21(行ヒ)162 / 裁判年月日: 平成21年12月17日 / 結論: 破棄自判
市が土地開発公社に対し土地の先行取得を委託する契約が,私法上無効とはいえず,また市にその取消権又は解除権があるとはいえないものの,著しく合理性を欠き,そのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存する場合であっても,次の(1),(2)など判示の事情の下では,客観的にみて市が上記委託契約を解消すること…
事件番号: 平成29(行ヒ)185 / 裁判年月日: 平成30年10月23日 / 結論: 破棄自判
市が,その経営する競艇事業に関して,競艇場に近接する水面に漁業権の設定を受けている漁業協同組合に対し公有水面使用協力費を支出したことが違法であるとして提起された住民訴訟の係属中に,その請求に係る当該支出を行った公営企業の管理者に対する損害賠償請求権及び上記組合に対する不当利得返還請求権を放棄する旨の市議会の議決がされた…
事件番号: 平成16(行ヒ)61 / 裁判年月日: 平成18年6月1日 / 結論: 棄却
市が,勧奨により退職した職員が市のあっせんにより再就職した場合には再就職先での給与額を一定の期間退職時の給与月額と同額とする旨の内部基準に基づき,退職した職員の再就職先の団体に対し給与の差額分を業務委託費の名目で支出したが,支出の外形からは市の一般住民においてその実質的な内容を知ることができない場合において,地方有力紙…