普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結する場合であっても,次の(1)又は(2)のときには,当該売買契約の締結は違法となる。 (1) 上記委託契約を締結した普通地方公共団体の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又は濫用があり,当該委託契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるなど,上記委託契約が私法上無効であるとき。 (2) 上記委託契約が私法上無効ではないものの,これが違法に締結されたものであって,当該普通地方公共団体がその取消権又は解除権を有している場合や,当該委託契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,客観的にみて当該普通地方公共団体が当該委託契約を解消することができる特殊な事情がある場合であるにもかかわらず,当該普通地方公共団体の契約締結権者がこれらの事情を考慮することなく漫然と上記売買契約を締結したとき。
普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結することが違法となる場合
地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号,地方自治法2条14項,地方自治法138条の2,地方財政法4条1項
判旨
普通地方公共団体の長が、当該地方公共団体が締結した土地売買契約に基づいて代金を支払うことは、それが私法上の義務の履行としてなされるものであっても、当該売買契約が職権の著しい濫用または逸脱に当たり公金支出の基礎となるべき事務執行行為として違法と認められる場合には、財務会計上の行為として違法となる。
問題の所在(論点)
地方公共団体の長が締結した私法上の契約に基づき公金を支出した場合において、当該契約自体に職権濫用等の違法があるとき、当該支出行為(財務会計上の行為)も違法となるか。また、これによって長は賠償責任を負うか(地方自治法242条の2第1項4号)。
規範
地方公共団体の長が公金を支出する際、その基礎となる売買契約等の私法上の行為が職権の範囲内にあるか否かが問題となる。当該行為が、職権の範囲を著しく逸脱し、またはこれを濫用してなされたものであり、公金支出の基礎となる事務執行行為として違法と認められる場合には、たとえ契約形式が整い、私法上の義務が存在しているように見えても、その支出行為自体が財務会計法規に違反し、違法となる。また、当該支出により地方公共団体に損害が生じた場合、長はその賠償責任を免れない。
事件番号: 平成21(行ヒ)162 / 裁判年月日: 平成21年12月17日 / 結論: 破棄自判
市が土地開発公社に対し土地の先行取得を委託する契約が,私法上無効とはいえず,また市にその取消権又は解除権があるとはいえないものの,著しく合理性を欠き,そのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存する場合であっても,次の(1),(2)など判示の事情の下では,客観的にみて市が上記委託契約を解消すること…
重要事実
本件地方公共団体の長(被告)は、特定の土地を代金約5億1412万円で買い受ける契約を締結し、これに基づき公金を支出した。原告側は、当該土地取得の必要性が乏しいにもかかわらず、高額な代金を支払ったことは職権濫用であり、公金支出は違法であると主張して住民訴訟を提起した。原審は、当該契約に基づく代金支払義務が存する以上、支出行為を直ちに違法と解することはできず、被告に損害賠償責任を負わせる余地はないと判断した。
あてはめ
財務会計上の行為の適法性は、その前提となる事務執行行為の適法性と切り離して考えることはできない。判決によれば、土地取得の必要性や代金額の妥当性について検討し、仮に当該土地取得が「職権の範囲を著しく逸脱し、又はこれを濫用してされたもの」と評価されるならば、それは公金支出の基礎を欠くものとして違法な事務執行となる。このような違法な事務執行に基づく支出は、形式的に契約上の義務履行であっても、財務会計上の適正を欠くものとして違法といえる。原審が、契約の存在のみを理由に支出の違法性を否定し、被告の賠償責任の有無を審理しなかった点は、法解釈を誤ったものと解される。
結論
私法上の義務の履行であっても、その基礎となる事務執行行為に職権濫用等の違法がある場合には、公金の支出は違法となる。したがって、当該土地取得の必要性や価格の正当性に基づき、職権濫用の有無を審理させるため、原審に差し戻すべきである。
実務上の射程
地方自治法における住民訴訟において、財務会計上の行為の前提となる「原因行為(契約等)」の違法性が支出行為の違法性に連動することを明示した。特に「職権の著しい逸脱・濫用」がある場合に限定して、私法上の義務履行による支出の違法性を認める枠組みを提示している。
事件番号: 平成15(行ヒ)299 / 裁判年月日: 平成18年1月19日 / 結論: その他
県が,県議会議員の職にあった者の功労に報いるとともにその者らに引き続き県政の発展に寄与してもらう趣旨で,その者らのうち会則の趣旨に賛同する者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために補助金を交付した場合において,同補助金の対象となった事業がいずれも同会の会員を対象とした内部的な行事等であってその事業自体に公益性を…
事件番号: 平成22(行ヒ)136 / 裁判年月日: 平成24年4月23日 / 結論: 破棄差戻
1 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の損害賠償請求権を放棄する旨の議会の議決がされた場合において,当該請求権の発生原因である公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響(その違法事由の性格や当該職員の帰責性等を含む。),当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有…
事件番号: 平成14(行ヒ)325 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄自判
市の局長等が出席した会合に係る220件余の食糧費の各支出について支出の日から1年を経過した後に住民監査請求がされた場合において,住民団体が市の情報公開条例に基づく公開請求をした結果,上記監査請求の約4か月弱前には,上記各支出を含む1年度分の食糧費支出に関し個別の支出の日,金額,その内訳及び債権者名並びに支出に係る会合の…