市の局長等が出席した会合に係る220件余の食糧費の各支出について支出の日から1年を経過した後に住民監査請求がされた場合において,住民団体が市の情報公開条例に基づく公開請求をした結果,上記監査請求の約4か月弱前には,上記各支出を含む1年度分の食糧費支出に関し個別の支出の日,金額,その内訳及び債権者名並びに支出に係る会合の場所,出席人数及び市側の出席者が明らかとなる文書の写しの交付を受けたこと,上記文書の件数は1422件であったが,上記団体はその交付を受けた日から約3か月後には会合出席者1人当たりの金額が6000円を超えるものが230件程度あるなどの分析結果の集約を終えることができたのにかかわらず,その分析結果を新聞紙上に発表して監査請求人を公募し,その約25日後に上記団体の構成員及び上記公募に応じた者が上記監査請求をしたことなど判示の事実関係の下では,同請求の約4か月弱前ころには,市の一般住民においても同様の情報公開請求手続を採るなど相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記各支出について監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができたというべきであり,上記監査請求はその時から相当な期間内にされたということはできず,同請求が上記各支出の日から1年を経過した後にされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとはいえない。 (反対意見がある。)
食糧費の支出の日から1年を経過して住民監査請求がされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとはいえないとされた事例
地方自治法242条2項
判旨
住民監査請求の期間制限における「正当な理由」の有無は、住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的に行為の存在・内容を知ることができたと解される時から、相当な期間内に請求されたか否かにより判断すべきである。情報公開請求により文書が交付され、支出の内容が判明した時点から4か月弱を経過してなされた監査請求は、分析に時間を要したとしても「相当な期間内」とは認められない。
問題の所在(論点)
住民監査請求の期間制限(行為から1年)を経過した後に請求を行う場合、情報公開手続等に時間を要したことや、対象となる支出件数が多数であることをもって、地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」が認められるか。
規範
地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は、特段の事情のない限り、住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合に、客観的に上記程度に知ることができたと解される時から、相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである。
事件番号: 平成16(行ヒ)61 / 裁判年月日: 平成18年6月1日 / 結論: 棄却
市が,勧奨により退職した職員が市のあっせんにより再就職した場合には再就職先での給与額を一定の期間退職時の給与月額と同額とする旨の内部基準に基づき,退職した職員の再就職先の団体に対し給与の差額分を業務委託費の名目で支出したが,支出の外形からは市の一般住民においてその実質的な内容を知ることができない場合において,地方有力紙…
重要事実
北九州市の住民である被上告人らは、平成7年度の食糧費支出(本件各支出)を違法として監査請求を行った。本件では、平成9年8月19日に情報公開請求により支出の日、金額、出席人数等が判明する文書の交付を受けた。被上告人らは約1,422件の文書を分析し、同年11月22日に分析結果を公表した上で、文書交付から約4か月弱が経過した同年12月15日に本件監査請求を行った。
あてはめ
被上告人らは文書交付を受けた平成9年8月19日の時点で、監査請求をするに足りる程度に支出の存在・内容を知ることができたといえる。支出件数が220件超と多数であっても、現に文書交付から約3か月後には分析を終えていたことから、その後にさらに約25日を経過してなされた本件監査請求は「相当な期間内」にされたものとは評価できない。したがって、分析の必要性等の事情を考慮しても正当な理由があるとは認められない。
結論
本件監査請求には「正当な理由」がなく不適法であるため、当該請求を経て提起された本件訴えは却下されるべきである。
実務上の射程
住民訴訟の適法要件としての住民監査請求(前置主義)について、期間制限の起算点を「知ることができた時」に設定し、その後の「相当な期間」を厳格に解する射程を持つ。大量の公金支出を争う場合であっても、情報入手から数か月単位の遅滞は致命的となるため、答案上は早期の請求がなされたか否かを峻別する指標となる。
事件番号: 平成10(行ツ)69 / 裁判年月日: 平成14年9月12日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記…
事件番号: 平成15(行ヒ)299 / 裁判年月日: 平成18年1月19日 / 結論: その他
県が,県議会議員の職にあった者の功労に報いるとともにその者らに引き続き県政の発展に寄与してもらう趣旨で,その者らのうち会則の趣旨に賛同する者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために補助金を交付した場合において,同補助金の対象となった事業がいずれも同会の会員を対象とした内部的な行事等であってその事業自体に公益性を…
事件番号: 平成17(行ヒ)304 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結する場合であっても,次の(1)又は(2)のときには,当該売買契約の締結は違法となる。 (1) 上記委託契約を締結した普通地方公共団体の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱…
事件番号: 平成13(行ツ)38 / 裁判年月日: 平成14年9月17日 / 結論: 破棄差戻
市が公園用地とするために買い受けた土地の売買契約の締結及び売買代金の支出について住民監査請求がされた場合において,買収予定区域を明示した都市計画案の縦覧並びに市への所有権移転登記及び市土地台帳への登録がされ,市の決算説明書の記載から1?当たりの売買価格の平均値が明らかとなっていたなど判示の事実関係の下においては,上記決…