市が公園用地とするために買い受けた土地の売買契約の締結及び売買代金の支出について住民監査請求がされた場合において,買収予定区域を明示した都市計画案の縦覧並びに市への所有権移転登記及び市土地台帳への登録がされ,市の決算説明書の記載から1?当たりの売買価格の平均値が明らかとなっていたなど判示の事実関係の下においては,上記決算説明書が一般の閲覧に供されて市の住民がその内容を了知することができるようになったころには,市の住民が相当の注意力をもって上記各書類を調査すれば客観的にみて上記売買契約の締結又は売買代金の支出について監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができたというべきであり,上記決算説明書が一般の閲覧に供された時期を確定することなく,市議会における売買価格の相当性に関する質疑が新聞報道された時から相当な期間内に監査請求がされたとして,監査請求が上記各行為のあった日から1年を経過した後にされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとした原審の判断には,違法がある。
売買契約の締結の日及び売買代金の支出の日から1年を経過して住民監査請求がされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
地方自治法242条2項
判旨
地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」の有無は、住民が相当の注意力をもって調査すれば、客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から、相当な期間内に監査請求をしたか否かにより判断すべきである。
問題の所在(論点)
住民監査請求の期間制限(地方自治法242条2項)に関し、代金支出から1年を経過した後に監査請求がなされた場合において、同項ただし書の「正当な理由」が認められるための判断枠組みが問題となる。
規範
地方自治法242条2項本文が監査請求期間を制限した趣旨は、財務会計上の行為の法的安定性確保にある。もっとも、行為が秘密裡になされた場合等にまでこの制限を貫くのは相当でない。したがって、同項ただし書の「正当な理由」の有無は、特段の事情のない限り、住民が「相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時」から、相当な期間内に監査請求をしたか否かによって判断すべきである。
事件番号: 平成18(行ヒ)168 / 裁判年月日: 平成20年3月17日 / 結論: 破棄差戻
県警察本部の県外出張に係る旅費の支出について住民監査請求がされた場合において,当該住民が県の情報公開条例に基づき上記出張に関する資料の開示を求めたところ,当初は,上記出張の旅行期間,目的地,用務等の事項が開示されず,その部分開示決定に対する異議申立ての結果,初めてこれらの事項が開示されるに至り,その1か月後に上記監査請…
重要事実
仙台市(市)は、平成2年度及び3年度に公園用地として本件各土地を上告人らから買い受けたが、その価格は正常価格の約3倍から4.9倍という高値であった。市は予算・決算説明書を一般の閲覧に供しており、決算説明書には面積と事業費の総額が記載されていたため、平米単価の平均値を算出することは可能な状態であった。住民である被上告人らは、平成5年9月の市議会質疑と新聞報道により高値買い入れの疑いを知り、同年11月に監査請求を行ったが、代金支払時から1年の期間を経過していた。
あてはめ
本件では、公園整備の都市計画案の縦覧、所有権移転登記、土地台帳への登録が行われていた。特に、予算・決算説明書が一般の閲覧に供されており、これらを相当の注意力をもって調査すれば、平米単価の平均値(約17万円)を把握でき、監査請求に足りる程度に本件各契約の内容を知ることができたといえる。したがって、単に新聞報道等で主観的に疑念を抱いた時ではなく、これら公書類が閲覧可能となり、客観的に内容を知り得た時期を基準とすべきである。本件では、決算説明書が閲覧可能となった時期が不明であるため、差し戻して審理を尽くす必要がある。
結論
決算説明書等が一般の閲覧に供され、住民がその内容を了知し得た時から相当な期間内に監査請求がなされたといえない限り、「正当な理由」は認められない。
実務上の射程
住民監査請求の期間徒過の救済に関するリーディングケースである。答案上は、単なる「主観的な認識」ではなく「客観的な知る可能性(相当な注意力による調査)」を基準とすることを明示し、具体的事実(登記、公報、予算書等の公開状況)をあてはめて起算点を特定する際に用いる。
事件番号: 平成10(行ヒ)51 / 裁判年月日: 平成14年7月2日 / 結論: 破棄自判
1 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に地方自治法2…
事件番号: 平成14(行ヒ)325 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄自判
市の局長等が出席した会合に係る220件余の食糧費の各支出について支出の日から1年を経過した後に住民監査請求がされた場合において,住民団体が市の情報公開条例に基づく公開請求をした結果,上記監査請求の約4か月弱前には,上記各支出を含む1年度分の食糧費支出に関し個別の支出の日,金額,その内訳及び債権者名並びに支出に係る会合の…
事件番号: 平成12(行ヒ)76 / 裁判年月日: 平成14年7月18日 / 結論: 棄却
日本下水道事業団が市から建設の委託を受けた施設の設備工事を業者に発注した場合において,業者らが談合した結果,同事業団と業者との間で不当に高額の代金で工事請負契約が締結され,委託者として最終的にその工事請負代金を負担する市に損害を与えたことが,上記業者らの市に対する不法行為に当たり,市は上記業者らに対し損害賠償請求権を有…
事件番号: 平成10(行ツ)86 / 裁判年月日: 平成14年10月15日 / 結論: その他
1 賃貸借契約の締結を対象とする住民監査請求においては,契約締結の日を基準として地方自治法242条2項本文の規定を適用すべきである。 2 市有地の賃貸借契約の締結について住民監査請求がされた場合において,その締結に至る事実経過が逐一新聞報道され,同監査請求の請求人が,その入手した市の内部資料により上記契約における権利金…