1 賃貸借契約の締結を対象とする住民監査請求においては,契約締結の日を基準として地方自治法242条2項本文の規定を適用すべきである。 2 市有地の賃貸借契約の締結について住民監査請求がされた場合において,その締結に至る事実経過が逐一新聞報道され,同監査請求の請求人が,その入手した市の内部資料により上記契約における権利金及び賃料の算定根拠を知ることができ,これに基づいて自ら不動産鑑定士として監査請求の64日前に上記権利金及び賃料が適正な額より低いとする旨の意見書を作成したなど判示の事実関係の下においては,監査請求が上記契約の締結の日から1年を経過した後にされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとはいえない。 3 普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の締結した契約に基づく債務の履行をその相手方に対して求める代位請求住民訴訟は,地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの)所定のいずれの請求にも当たらない不適法な訴えであるが,同債務の履行遅滞に基づく遅延損害金の支払を上記相手方に対して求める代位請求住民訴訟は,同項4号所定の怠る事実に係る相手方に対する損害賠償の請求に当たる適法な訴えである。 4 複数の者が共同訴訟人として提起した住民訴訟において,請求を棄却すべきものとした原判決を不服として共同訴訟人の一部が上告した場合に,上告審は,原判決を破棄し第1審判決を取り消して上告人及び上告しなかった共同訴訟人の訴えを却下するときは,上告人と被上告人との間において生じた訴訟の総費用についてのみ負担の裁判をすべきである。
1 賃貸借契約の締結についての住民監査請求期間の始期 2 賃貸借契約の締結の日から1年を経過して住民監査請求がされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとはいえないとされた事例 3 契約に基づく債務の履行を求める代位請求住民訴訟及び同債務の履行遅滞に基づく遅延損害金の支払を求める代位請求住民訴訟の適否 4 住民訴訟において上告審が原判決を破棄し第1審判決を取り消して上告人及び上告しなかった共同訴訟人の訴えを却下する場合における訴訟費用の負担の裁判
地方自治法242条2項,地方自治法242条の2第1項(平成14年法律第4号による改正前のもの),地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの),民訴法40条1項,民訴法67条2項
判旨
住民監査請求の期間制限(地方自治法242条2項)に関し、対象行為が契約締結等の「一時的行為」である場合は、契約締結の日を基準に期間を算定すべきである。また、除斥期間経過後に「正当な理由」が認められるかは、客観的に知ることが困難な場合であっても、請求者自身が当該行為の存在及び内容を具体的に認識した時から相当な期間内に請求したか否かにより判断される。
問題の所在(論点)
1. 契約締結行為を対象とする住民監査請求の期間算定基準日(地方自治法242条2項)。 2. 1年の除斥期間経過後の監査請求に「正当な理由」(同項ただし書)が認められるかの判断基準。
事件番号: 昭和47(オ)274 / 裁判年月日: 昭和49年7月22日 / 結論: 棄却
賃料増額に関する調停において増額分の支払につき履行期が定められなかつたときは、即時その履行期が到来すると解すべきである。
規範
1. 地方自治法242条2項本文にいう「当該行為のあった日」とは、契約締結のような一時的行為については、その行為のなされた日を指す。 2. 同項ただし書の「正当な理由」の有無は、住民が相当の注意力をもって調査しても客観的に当該行為を知り得なかった場合には、調査により知り得たはずの時から相当な期間内に請求したかで判断する。 3. ただし、客観的に知ることが困難な状況であっても、特定の請求者自身が監査請求をするに足りる程度に当該行為の内容を認識した場合には、その認識した時から相当な期間内に請求したか否かによって「正当な理由」の有無を判断すべきである。
重要事実
仙台市の住民である上告人が、市と第三者との間で締結された土地賃貸借契約(昭和62年7月1日締結)につき、随意契約の方法や対価の不当性を理由に住民監査請求(平成元年1月20日)を経て、住民訴訟を提起した。本件契約の締結から監査請求まで1年以上経過していたが、上告人は、契約に至る事実経過の報道に加え、昭和63年11月10日には市の内部資料を入手し、同月17日には自ら不動産鑑定士として賃料等の不当性を指摘する意見書を作成していた。
あてはめ
1. 本件監査請求の対象は土地賃貸借契約の締結であり、これは一時的行為である。したがって、期間の起算点は契約締結日である昭和62年7月1日となる。 2. 監査請求がなされたのはそれから1年を経過した後である。正当な理由について検討するに、一般住民が知ることが困難な場合でも、上告人は昭和63年11月17日には、内部資料に基づき賃料が不適正であるとする具体的な意見を形成していた。 3. そうであれば、上告人はその時点で監査請求をするに足りる程度に内容を認識していたといえ、そこから約2ヶ月経過した平成元年1月20日の請求は「相当な期間内」になされたものとは認められない。
結論
本件監査請求には「正当な理由」がなく、適法な監査請求を経ていないため、本件住民訴訟は却下を免れない。
実務上の射程
契約締結という「一時的行為」と、その後の履行という「継続的状態」を峻別し、前者の違法を争うなら契約時が基準となることを明示した。また、正当な理由の判断において「請求者個人の認識」を重視する主観的基準を導入しており、情報公開請求などで内部情報を得た後の提訴遅延を厳しく制限する射程を持つ。
事件番号: 昭和44(オ)375 / 裁判年月日: 昭和45年10月16日 / 結論: 破棄差戻
省略(判文参照)
事件番号: 昭和48(オ)859 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 棄却
借地法四条一項但書の正当事由の有無の判断基準時を賃貸借期間終了の時とし、その後の事情を右判断基準時の事実関係を認定するための資料とした原審の認定判断は正当である。
事件番号: 昭和43(オ)52 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一時使用の目的で賃借した土地上に建築された仮設建物を買い受けるとともに賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡を受けた者との間で、賃貸人が土地の一部を右譲受人に売却し、他を明け渡す旨の約束ができたが、譲受人が代金を払わないため右売買契約が解除され、そのため右土地の明渡について話合がされ、結局一〇年の賃貸借契約が締結されるに至つた…
事件番号: 昭和46(オ)873 / 裁判年月日: 昭和47年1月20日 / 結論: 棄却
被参加人が上告を提起した場合に、補助参加人が上告理由書を提出することのできる期間は、被参加人の上告理由書提出期間内に限られる。