借地法四条一項但書の正当事由の有無の判断基準時を賃貸借期間終了の時とし、その後の事情を右判断基準時の事実関係を認定するための資料とした原審の認定判断は正当である。
借地法四条一項但書の正当事由の有無の判断基準時とその後の事情
借地法4条
判旨
借家法における更新拒絶の「正当事由」の存否は、賃貸借期間満了時を基準として判断すべきであるが、その後の事情を基準時における事実関係を認定するための資料として斟酌することは許される。
問題の所在(論点)
借家法(現行借地借家法28条相当)に基づく更新拒絶の「正当の事由」を判断する際の基準時はいつか。また、期間終了後の事情を判断に用いることは許されるか。
規範
建物賃貸借の更新拒絶または更新請求に対する異議に必要とされる「正当の事由」の有無は、原則として賃貸借期間終了時を判断の基準時とする。もっとも、期間終了後に生じた事後的な事情であっても、それが期間終了時における事実関係や、その時点で予測可能であった事情を裏付ける証拠資料となる場合には、これを斟酌することができる。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、建物賃貸借契約の更新を拒絶する異議を述べ、正当事由の有無が争われた事案。原審は、賃貸借期間終了時を基準として正当事由を認めたが、その判断において期間終了後の事情についても言及していたため、上告人はこれが基準時の原則に反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(オ)1294 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 棄却
更新拒絶の正当事由の有無は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであつた時期を基準として判断すべきであるから、その時期以後に立退料支払の条件提示の事実が生じたとしても、正当事由として斟酌しえない。
あてはめ
正当事由の有無は期間終了時を基準に判断されるべきであるが、原審が期間終了後の事情に触れたのは、あくまで期間終了時に存在した事実関係を認定するための資料(間接事実または証拠資料)として斟酌したにすぎない。これは基準時における判断を補強するものであり、事後的な事情そのものを独立した正当事由として扱ったものではないと評価される。
結論
本件更新請求に対する異議には正当事由が認められる。期間終了後の事情を認定資料として用いることは適法であり、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
借地借家法28条の正当事由の判断基準時が「期間満了時」であることを明示する際の根拠となる。答案上では、期間満了後の事情(立退料の提供の申し出や建物の朽廃の進行等)をどこまで考慮できるかを論じる際、それが「基準時の状況を推認させる資料」であるという構成をとることで、基準時原則を維持しつつ事後的事情を拾い上げることが可能になる。
事件番号: 昭和35(オ)850 / 裁判年月日: 昭和36年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の更新拒絶に必要な「正当な事由」の有無は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して判断すべきである。賃貸人が賃料受領を明確に拒絶しているなどの事情がある場合、更新拒絶を認めるに足りる正当事由があるとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)に対し、建…
事件番号: 昭和41(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和42年2月24日 / 結論: 棄却
賃料が数次にわたつて値上げされたことや賃料が当該借地の固定資産税を上廻つていることは、一時使用のための賃貸借契約であると認定するについて妨げとなるものではない。
事件番号: 昭和39(オ)848 / 裁判年月日: 昭和40年10月5日 / 結論: 棄却
供託書の記載を司法書士に依頼するに際し、法律知識のとぼしい普通の人間は、法律専門職である司法書士に対し供託原因の記載内容まで指示することは通常期待できない、という経験則はない。
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…