更新拒絶の正当事由の有無は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであつた時期を基準として判断すべきであるから、その時期以後に立退料支払の条件提示の事実が生じたとしても、正当事由として斟酌しえない。
更新拒絶の正当事由の有無の判断時点。
借地法6条
判旨
借地契約の更新拒絶における正当事由の有無は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであった時期を基準に判断すべきである。そのため、当該基準時期の経過後に提示された立退料の支払条件等は、正当事由の判断において斟酌することはできない。
問題の所在(論点)
借地契約の更新拒絶に必要な「正当事由」の存否を判断するにあたり、期間満了後の「遅滞なく異議を述べるべき時期」よりも後に提示された立退料の支払等の事情を考慮することができるか(判断の基準時)。
規範
借地法4条1項(現・借地借家法6条参照)に基づく更新拒絶の正当事由の有無を判断する基準時期は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであった時期(期間満了時又は遅滞なく異議を述べるべき時期)である。この基準時期よりも後に生じた事象や、後から提示された条件は、更新拒絶時における正当事由を補完するものとして斟酌することはできない。
重要事実
土地所有者である上告人は、借地人である被上告人らに対し、建物収去土地明渡を求めて提訴した。上告人は、第1審判決後の原審(控訴審)において初めて、被上告人らに対し立退料150万円を支払う意思がある旨を主張し、当該立退料の支払と引換えに明渡しを請求した。これに対し、被上告人らは、当該立退料の提示は更新拒絶の判断基準時を過ぎた後のものであるとして、正当事由を基礎付ける事実とはならないと反論した。
事件番号: 昭和40(オ)974 / 裁判年月日: 昭和41年4月1日 / 結論: 棄却
一 罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基づく賃借申出に対する拒絶の意思表示は、原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、正当事由がないと解すべきである。 二 前項の正当事由の存否については、右賃借申出の時(したがつて右拒絶の意思表示の時)を標準として決すべきであり、事実審の口頭弁論終結時を標準とすべきではな…
あてはめ
正当事由の有無は、法律上異議を述べるべきであった時点の諸客観的状況によって決せられるべきである。本件において、上告人が主張する「立退料150万円の贈与(支払)」という条件提示は、原審において初めてなされたものであり、土地所有者が異議を述べるべきであった基準時期よりも後に生じた事実に該当する。したがって、この提示事実を、更新拒絶を正当化する事由として遡って考慮し、正当事由を補完させることは認められない。
結論
更新拒絶の正当事由は、異議を述べるべき時期を基準に判断すべきであり、その後の事実である立退料の提示を考慮しなかった原審の判断は正当である。上告棄却。
実務上の射程
本判決は、正当事由の判断基準時を厳格に捉え、事後的な立退料の提供による正当事由の補完を否定した。しかし、後の判例法理(最判昭46.4.23等)では、明渡断行までの事実を考慮できるとする「口頭弁論終結時説」が有力となり、立退料の提供は事後であっても正当事由を補完し得ると解されるようになっている。答案上は、本判決の基準時への言及を意識しつつ、現行の実務(補完的立退料)との整合性に注意して引用すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)1350 / 裁判年月日: 昭和37年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法に基づく更新拒絶の正当事由の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、賃貸人の生活維持のために土地を使用する必要性等の個別事情は、正当事由を構成する一判断要素として認められる。 第1 事案の概要:土地の賃貸人である被上告人が、借地期間の満了に伴い更新拒絶を主張して土地の明け渡…
事件番号: 昭和48(オ)859 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 棄却
借地法四条一項但書の正当事由の有無の判断基準時を賃貸借期間終了の時とし、その後の事情を右判断基準時の事実関係を認定するための資料とした原審の認定判断は正当である。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和35(オ)850 / 裁判年月日: 昭和36年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の更新拒絶に必要な「正当な事由」の有無は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して判断すべきである。賃貸人が賃料受領を明確に拒絶しているなどの事情がある場合、更新拒絶を認めるに足りる正当事由があるとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)に対し、建…