一 罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基づく賃借申出に対する拒絶の意思表示は、原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、正当事由がないと解すべきである。 二 前項の正当事由の存否については、右賃借申出の時(したがつて右拒絶の意思表示の時)を標準として決すべきであり、事実審の口頭弁論終結時を標準とすべきではない。
一 罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基づく賃借申出の拒絶の意思表示に正当事由がないとされた事例 二 前項の正当事由の存否を判断すべき標準時期
罹災都市借地借家臨時処理法2条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法に基づく賃借申出への拒絶や、借地法上の土地使用継続に対する異議に際し、正当事由の存否を判断すべき基準時は、事実審の口頭弁論終結時ではなく、拒絶または異議の意思表示がなされた時である。
問題の所在(論点)
借地の賃借申出に対する拒絶や、期間満了後の使用継続に対する異議における「正当事由」の存否を判断する基準時はいつか。事実審の口頭弁論終結時まで考慮すべきか、あるいは意思表示の時点に限定されるかが問題となる。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく賃借申出に対する拒絶の正当事由、および、借地法6条(現借地借家法5条等)に基づく土地使用継続に対する異議の正当事由の存否については、当該意思表示がなされた時(申出時または異議時)を標準として決すべきであり、事実審の口頭弁論終結時を標準とすべきではない。
重要事実
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づき、被上告人らが本件土地の賃借を申し出た。これに対し、土地所有者である上告人は拒絶の意思表示を行い、後に賃借権の存続期間満了後の使用継続に対しても異議を述べた。上告人は、これらの拒絶や異議に係る「正当事由」の判断基準時は、事実審の口頭弁論終結時であるべきだと主張して上告した。
事件番号: 昭和37(オ)1294 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 棄却
更新拒絶の正当事由の有無は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであつた時期を基準として判断すべきであるから、その時期以後に立退料支払の条件提示の事実が生じたとしても、正当事由として斟酌しえない。
あてはめ
罹災都市借地借家臨時処理法2条の解釈上、賃借申出を拒絶する正当事由は、拒絶の意思表示がなされた時点の諸事情を基礎に判断されるべきである。また、同法により設定された賃借権についても、期間満了後の使用継続に対し賃貸人が述べる異議の正当事由は、異議が述べられた時点を基準とすべきである。本件において、上告人の拒絶および異議の時点における諸事情を考慮した原審の判断に正当事由がないとした結論は、法条の解釈に照らし妥当である。
結論
正当事由の存否は、拒絶または異議の意思表示の時を基準に判断すべきである。本件の上告は棄却される。
実務上の射程
借地法(旧法)における異議の正当事由の基準時を明示した判例である。現行の借地借家法下においても、更新拒絶等の意思表示時点の事情が重視されるが、判例実務上は、解約申入れ等においてその後の事情も補完的に考慮される場合がある点に留意が必要である。本判決は特に臨時処理法等の特殊な文脈における基準時を明確にしている。
事件番号: 昭和48(オ)859 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 棄却
借地法四条一項但書の正当事由の有無の判断基準時を賃貸借期間終了の時とし、その後の事情を右判断基準時の事実関係を認定するための資料とした原審の認定判断は正当である。
事件番号: 昭和44(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和47年2月10日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約成立の事情として、賃貸人は、当初、賃借人の借地申入れに対し、他人に土地を貸すときは回収が困難になるとして賃貸することに反対していたが、賃借人や仲介に入つた知人から、一時しのぎに僅かな土地でもよいし、何時でも取り払える仮小屋の建物でよいから」と執拗に懇請され、やむなくバラツク建物に限り建築を許す趣旨で、約六…
事件番号: 昭和34(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除後に生じた不当利得ないし損害賠償としての賃料相当額の算定において、当事者間に争いのない約定賃料額を基準とすることは適法であり、上告審で初めて主張された統制額等の考慮を欠いたとしても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間の土地賃貸借契約が解除さ…