借地契約の更新拒絶に正当事由ありとされた事例。
判旨
借地法に基づく更新拒絶の正当事由の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、賃貸人の生活維持のために土地を使用する必要性等の個別事情は、正当事由を構成する一判断要素として認められる。
問題の所在(論点)
借地法(旧法)4条1項における更新拒絶の「正当事由」の判断において、賃貸人の生活維持のための土地使用の必要性をどのように考慮すべきか。また、複数の事情を考量する際の判断枠組みが問われた。
規範
借地法(旧法)4条1項但書にいう「正当の事由」の有無は、土地所有者が自ら土地を使用することを必要とする事情のほか、借地権者が借地上に建物を所有して土地を使用することを必要とする事情、借地に関する従前の経過、土地の利用状況、立退料の支払の有無等、諸般の事情を彼此考量して判断すべきである。
重要事実
土地の賃貸人である被上告人が、借地期間の満了に伴い更新拒絶を主張して土地の明け渡しを求めた。原審は、被上告人が自身の生活を維持するために本件土地を特定の方法で使用する必要があることを認定し、その他の諸般の事情を総合的に考慮した結果、更新拒絶に正当な事由があると判断した。これに対し、上告人(賃借人)は、原審が特定の事実を過重に評価していることや、公平の原則に反することなどを理由に上告した。
あてはめ
本件において、原審が認定した「被上告人の生活維持のために土地を使用する必要がある」という事実は、正当事由の有無を判断するための「単なる一事情」として考慮されたに過ぎない。原審は特定の事情にのみ偏重して判断したわけではなく、判示の諸般の事情を彼此考量して総合的に正当事由を認めており、その判断過程に法律解釈の誤りや公平の原則への違背は認められない。
結論
事件番号: 昭和35(オ)850 / 裁判年月日: 昭和36年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の更新拒絶に必要な「正当な事由」の有無は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して判断すべきである。賃貸人が賃料受領を明確に拒絶しているなどの事情がある場合、更新拒絶を認めるに足りる正当事由があるとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)に対し、建…
賃貸人の生活維持の必要性等を含む諸般の事情を総合考量して正当事由を認めた原判決の判断は正当であり、更新拒絶は有効である。
実務上の射程
正当事由の判断における「総合考量」の枠組みを再確認するものである。答案上は、賃貸人側の必要性と賃借人側の必要性を比較衡量する際、生活困窮度などの主観的事情も一つの要素として組み込めることを示す根拠として活用できる。ただし、特定の事情のみで決するのではなく、あくまで「彼此考量」が必要である点に留意する。
事件番号: 昭和36(オ)781 / 裁判年月日: 昭和37年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(旧法)の保護を受ける賃貸借への変更の有無は、建物の大小、形態、構造のみならず、諸般の事情を総合的に斟酌して判断されるべきである。また、解約申入れが権利濫用に当たるか否かは、認定された事実関係に基づき個別具体的に判断される。 第1 事案の概要:上告人は、ある時点を境として、本件賃貸借が借地法…
事件番号: 昭和37(オ)1294 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 棄却
更新拒絶の正当事由の有無は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであつた時期を基準として判断すべきであるから、その時期以後に立退料支払の条件提示の事実が生じたとしても、正当事由として斟酌しえない。
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
事件番号: 昭和34(オ)502 / 裁判年月日: 昭和37年6月6日 / 結論: 棄却
借地法第四条第一項は、憲法第二九条に違反しない。