借地法第四条第一項は、憲法第二九条に違反しない。
借地法第四条第一項の合憲性。
借地法4条1項,憲法29条1項,憲法29条2項
判旨
借地法4条1項但書(現借地借家法6条)の「正当の事由」は、土地所有者の自己使用の必要性だけでなく、借地権者側の土地使用の必要性をも比較考量して判定すべきである。
問題の所在(論点)
借地法4条1項但書(現借地借家法6条)にいう「正当の事由」の判断において、土地所有者側の事情だけでなく、借地権者側の土地使用の必要性を考慮すべきか。
規範
借地契約の更新拒絶に必要な「正当の事由」の有無は、土地所有者が自ら土地を使用することを必要とする事情のみならず、借地権者が土地の使用を継続することを必要とする事情をも参酌し、両者の利益を具体的・相対的に比較考量して判定する。
重要事実
土地所有者(上告人)が、借地権者(被上告人)に対し、借地法4条1項但書に基づき土地の自己使用の必要性を理由として更新拒絶を主張し、土地明け渡しを求めた。被上告人は当該土地上で鞄の製造・卸売・小売業を営んでおり、土地使用の継続を必要としていた。
あてはめ
事件番号: 昭和36(オ)1350 / 裁判年月日: 昭和37年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法に基づく更新拒絶の正当事由の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、賃貸人の生活維持のために土地を使用する必要性等の個別事情は、正当事由を構成する一判断要素として認められる。 第1 事案の概要:土地の賃貸人である被上告人が、借地期間の満了に伴い更新拒絶を主張して土地の明け渡…
借地法4条1項の改正趣旨は宅地不足の中で借地権者を保護することにある。文言上は所有者の自己使用が必要な場合に正当事由があるようにも見えるが、公共の福祉による所有権の制限という憲法の要請に照らせば、所有者側の事情のみで決すべきではない。本件において、上告人に自己使用の必要が認められるとしても、被上告人が営業拠点として土地を継続使用する必要性と比較考量し、相対的に上告人の必要性が優越しない限り、正当の事由があるとはいえない。原審が両者の事情を比較考量した上で、上告人の更新拒絶に正当事由がないとした判断は正当である。
結論
土地所有者側の必要性だけでなく、借地権者側の必要性をも比較考量すべきであり、本件更新拒絶には正当の事由がない。
実務上の射程
借地借家法6条(および28条)における「正当事由」判断のリーディングケースである。答案上は、まず「自己使用の必要性」等の主観的事由を挙げ、それを借地人側の事情と相対化して判断する枠組みとして定型的に用いる。また、財産権の公共の福祉による制限(憲法29条2項)の具体化としての側面も有する。
事件番号: 昭和32(オ)649 / 裁判年月日: 昭和32年12月27日 / 結論: 棄却
建物賃貸借の更新拒絶について必要とされる正当事由の存否は、賃貸人および賃借人の双方の利害得失を比較考量してこれを決すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)850 / 裁判年月日: 昭和36年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の更新拒絶に必要な「正当な事由」の有無は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して判断すべきである。賃貸人が賃料受領を明確に拒絶しているなどの事情がある場合、更新拒絶を認めるに足りる正当事由があるとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)に対し、建…
事件番号: 昭和37(オ)1294 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 棄却
更新拒絶の正当事由の有無は、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであつた時期を基準として判断すべきであるから、その時期以後に立退料支払の条件提示の事実が生じたとしても、正当事由として斟酌しえない。