建物賃貸借の更新拒絶について必要とされる正当事由の存否は、賃貸人および賃借人の双方の利害得失を比較考量してこれを決すべきである。
建物賃貸借における更新拒絶の正当事由。
借家法1条ノ2
判旨
建物賃貸借の更新拒絶における正当事由(借地借家法28条)は、賃貸人・賃借人双方の諸事情を比較考量して判断されるべきである。特に行政上の必要や校舎整備等の事情があり、かつ賃借人が将来の明渡を予測し得た場合には、賃借人の損害を理由に更新を拒絶できない場合がある。
問題の所在(論点)
建物賃貸借の更新拒絶において、旧借家法1条の2(現行借地借家法28条)の「正当の事由」をいかに判断すべきか。特に、権利金の授受や賃借人側の損害、および賃貸人による事前の明渡予告がどのように影響するか。
規範
建物賃貸借の更新拒絶に必要な正当事由は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して決定すべきである。権利金の授受がある場合でも、それが当然に更新拒絶を封ずるものではなく、当事者の意思解釈の問題に帰着する。判断にあたっては、建物の使用必要性、賃貸借期間の定め、明渡準備の猶予期間の有無等を総合的に考慮する。
重要事実
学校法人(賃貸人)が、経営する学園設備の整備のため、元来校舎用であった建物を5年の期間を定めて賃借人へ貸し出した。賃貸人は期間中、折に触れて自己使用の必要が生じたことを賃借人に通告し、期間満了後の直ちなる明渡を求めて、賃借人が移転準備をできるよう配慮していた。賃借人は、権利金の授受や営業上の損害発生を理由に、更新拒絶には正当事由がないと主張した。
事件番号: 昭和34(オ)502 / 裁判年月日: 昭和37年6月6日 / 結論: 棄却
借地法第四条第一項は、憲法第二九条に違反しない。
あてはめ
本件建物は元来校舎用であり、学校法人が学園整備上その使用を「絶対に必要」としている。また、期間を5年と定めた背景には、将来の自己使用の予測があった。賃貸人は、期間満了前に繰り返し通告を行い、賃借人に移転の準備を促すなど誠実な対応をとっている。このような状況下では、賃借人は誠実に移転先を物色すべきであり、自己に生じる損害の著大さを理由に明渡を拒むことはできない。権利金の授受も、当事者の意思解釈上、更新拒絶を永続的に排除するものとは認められない。
結論
賃貸人側の自己使用の必要性が高く、かつ賃借人が明渡を予測して準備する余地があった本件では、更新拒絶の正当事由が認められる。
実務上の射程
正当事由の判断における「双方の事情の比較考量」という基本枠組みを示しており、答案上は解約申入(法27条)と更新拒絶(法26条)で判断基準に差異がないことを論じる際に有用である。特に、賃貸借の目的(校舎用)や、事前の明渡予告という「賃借人の期待」を調整する事実が、立退料以外の要素として正当事由を基礎づける一要素となる点に注目すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)7 / 裁判年月日: 昭和34年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借の解約申入れにおける「正当事由」の有無は、当事者双方の利害関係のみならず、賃料不払の事情等、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)による建物賃貸借の解約申入れに対し、正当事由の欠如を主張して争った。被上告人側には他に居住や事業に使用…
事件番号: 昭和32(オ)177 / 裁判年月日: 昭和35年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済契約が有効と認められるためには、対象物件の価格が当時の貨幣価値を斟酌した債権額とおよそ相応し、両者の間に著しい差異がないことが必要である。また、不法占有者に対する建物収去土地明渡請求は、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:債務者Dは、被上告学園に対し計15万円…
事件番号: 昭和35(オ)850 / 裁判年月日: 昭和36年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の更新拒絶に必要な「正当な事由」の有無は、賃貸人および賃借人双方の利害得失を比較考量して判断すべきである。賃貸人が賃料受領を明確に拒絶しているなどの事情がある場合、更新拒絶を認めるに足りる正当事由があるとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)に対し、建…
事件番号: 昭和30(オ)645 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物明渡請求が権利の濫用に当たるか否かは、請求側の正当な目的の有無に加え、相手方側の事情を総合的に斟酌し、社会通念上是認できない程度のものといえるかによって判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(権利者)が上告人(占有者)に対し、本件建物の明渡しを求めて提訴した。上告人は、当該明渡請求が権…