賃料増額に関する調停において増額分の支払につき履行期が定められなかつたときは、即時その履行期が到来すると解すべきである。
賃料増額に関する調停において増額分の支払につき履行期が定められなかつた場合におけるその履行期
民法412条3項
判旨
賃料増額請求後の調停により賃料増額が合意された場合、増額分の履行期は特段の事情がない限り調停成立時に直ちに到来する。もっとも、増額分の支払遅滞があっても、直ちに信頼関係が破壊されたとは認められない場合には、解除権の行使は権利の濫用として無効となる。
問題の所在(論点)
1. 調停により合意された賃料増額分の履行期はいつ到来するか。 2. 増額分の支払遅滞を理由とする賃貸借契約の解除が認められるための要件。
規範
1. 賃料増額請求後の調停において増額が合意された場合、特段の事情のない限り、増額分は本来旧賃料と共に支払われるべきであったことが認められたものとして、調停において履行期の別段の合意がない限り、調停成立時に即時その履行期が到来する。 2. 賃貸借契約の解除には、賃借人の債務不履行が賃貸人と賃借人間の信頼関係を破壊するに足りるものであることを要し、それに至らない解除権の行使は権利の濫用として許されない。
重要事実
賃貸人(上告人)が賃借人(被上告人)に対し賃料増額請求を行い、その後調停が申し立てられた。昭和44年4月28日、調停において増額の合意が成立したが、増額分の履行期については特段の合意がなされなかった。上告人は、被上告人が増額分を直ちに支払わなかったことを理由に、同年5月2日に催告を行った上で賃貸借契約の解除を主張した。
事件番号: 昭和36(オ)300 / 裁判年月日: 昭和37年2月20日 / 結論: 棄却
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あてはめ
1. 本件では、調停において増額分の履行期に関する合意がなされていないため、調停成立日である昭和44年4月28日に即時履行期が到来したといえる。原審が催告時(5月2日)に到来したとした判断は誤りである。 2. しかし、履行期が調停成立時に到来していたとしても、増額分の支払をめぐる経緯や遅滞の期間等の事実関係に照らせば、当該支払遅滞が賃貸借契約の基礎となる信頼関係を破壊するものとは認められない。したがって、上告人による解除権の行使は権利の濫用にあたり無効と解される。
結論
増額分の履行期は調停成立時に到来するが、本件の支払遅滞は信頼関係を破壊するものとはいえず、解除は権利の濫用として無効であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
借地借家法32条に基づく増額請求後の確定(判決・調停)による増額分の履行期を判断する際の基準となる。答案上は、履行遅滞の成立(履行期)を認めた上で、信頼関係破壊の有無の検討(背信性の上書き)という二段階の構成で論じる際に有用である。
事件番号: 昭和42(オ)851 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
旧借地法第一二条(昭和四一年法律第九三号による改正前のもの)による地代増額請求権の行使による適正額の増額の効果は、増額請求の意思表示が相手方に到達した時に発生するものと解すべく、現行借地法第一二条第二、第三項が新設されても同条項施行前の増額請求については、同様に解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和43年8月2日 / 結論: 棄却
取立払の定のある賃料について、増額請求を受けた賃借人が、賃貸人の一箇月分の賃料の取立にさいしてその全額の支払を拒絶し、その後引続き適正額の賃料の支払をも拒絶する態度を示している等判示事実関係のもとにおいては、賃貸人が客観的に適正とされる額によつて五年分の賃料を自己の住所へ持参して支払うよう催告し、催告期間内に賃借人の住…
事件番号: 昭和38(オ)1164 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物買取請求権を有しない。