省略(判文参照)
礼拝堂の建築所有を目的とする土地の使用貸借が相当の期間の経過により終了した旨の判断に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例
民法597条,民訴法395条1項6号
判旨
返還時期の定めのない使用貸借において、民法597条2項但書(現行598条2項)の「使用収益をなすに足りる期間」を経過したか否かは、単なる経過年数だけでなく、貸借の経緯、当事者の人的関係、使用目的、貸主の必要性等を総合的に比較衡量して判断すべきである。
問題の所在(論点)
返還時期の定めがない建物所有目的の使用貸借において、貸主が民法597条2項但書(現行598条2項)に基づき解約申入れをするための「使用収益をなすに足りる期間」の判断基準が問題となる。
規範
民法597条2項但書(現行598条2項)にいう「使用収益をなすに足りる期間」を経過したか否かは、単に経過した年月のみにとらわれることなく、以下の諸事情を比較衡量して判断すべきである。(1)土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、(2)その後の当事者間の人的つながり、(3)借主の使用目的・方法・程度、(4)貸主の土地使用を必要とする緊要度。なお、建物所有目的であっても、建物が朽廃するまで返還請求できないわけではない。
重要事実
宗教法人である上告人は、被上告人会社の実権掌握者との親密な関係から、昭和24年頃に礼拝堂建築目的で本件土地を無償・期限の定めなく借り受けた。上告人は昭和25年に礼拝堂、昭和33年に牧師館を建築した。昭和39年、被上告人はモータープール拡張のために本件土地の自用が必要になったとして、解約の意思表示を行い、土地返還を求めた。原審は、契約から15年8ヶ月が経過し、貸主の必要性や代替地提供の提示があったことを理由に返還請求を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件では、契約成立から約15年が経過しており、期間の経過としては一応相当といえる。しかし、返還請求のわずか数年前(昭和33年)に、貸主側の承諾を得て牧師館が建築されていた事実があるならば、当事者間に使用継続の相互了解があったとみる余地がある。このような了解がある場合、その後に使用継続を否定しうる「特別な事情」(予見できない自用の必要性や、借主側の信義にもとる忘恩的行為など)が認められない限り、安易に相当期間の経過を認めるべきではない。原審は、牧師館建築時の承諾の有無や相互了解の程度を十分に審理しておらず、審理不尽の違法がある。
結論
解約申入れが認められるためには、経過年数に加え、牧師館建築の経緯や貸主の自用必要性の具体的内容を総合考慮すべきであり、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
使用貸借の解除(返還請求)に関するリーディングケース。答案では、単なる年数計算ではなく「比較衡量」の枠組みを示す際に引用する。特に、土地上の建物が再築・増築された際の貸主の態度は「期間」の判断に直結する重要な考慮要素となる。
事件番号: 昭和44(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和47年2月10日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約成立の事情として、賃貸人は、当初、賃借人の借地申入れに対し、他人に土地を貸すときは回収が困難になるとして賃貸することに反対していたが、賃借人や仲介に入つた知人から、一時しのぎに僅かな土地でもよいし、何時でも取り払える仮小屋の建物でよいから」と執拗に懇請され、やむなくバラツク建物に限り建築を許す趣旨で、約六…
事件番号: 昭和42(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年11月24日 / 結論: 棄却
父母を貸主とし、子を借主として成立した返還時期の定めがない土地の使用貸借であつて、使用の目的は、建物を所有して会社の経営をなし、あわせて、右経営から生ずる収益により老父母を扶養する等判示内容のものである場合において、借主は、さしたる理由もなく老父母に対する扶養をやめ、兄弟とも往来をたち、使用貸借当事者間における信頼関係…
事件番号: 昭和43(オ)637 / 裁判年月日: 昭和44年4月15日 / 結論: 破棄差戻
建物所有を目的とする借地契約においては、その借地上の建物に対し通常の域をこえる大修繕をした場合には、その借地契約は、右建物が現実に朽廃していなくても、その修繕前の建物が朽廃すべかりし時期に終了するものと解すべきである。